課題6 ネームの感想
課題6「物語をでっちあげる」のネームの感想です。
やながわけんじさん『煩悩』
6ページの女の子の登場シーンがインパクトがありました。かわいいのだけれど、ちょっと怖い感じもしました。エビフライを咀嚼して飲み込むまでが丁寧に描かれていて、不思議な生々しさがありました。9ページで主人公とおじいさんが神妙な顔つきでポーズがシンクロして、動画を見ているシーンがおもしろかったです。
11ページ1コマ目でサッと元の位置に戻る主人公と、それを見るおじいさんの何とも言えない表情もいいですね。
女の子がカツの真ん中の大きいところを食べてしまっている、ふてぶてしさもおもしろいです。
女の子はやっていることが、なかなかヤバい感じもしますが、何となく許せてしまえそうな魅力がありました。特に、13ページの「ありがと」の笑顔が、かわいくていいです。
あい乙いなびこさん『城の中の浦島太郎』
浦島太郎にとっては、地上での約束が心の支えだったのでしょうね。亀と浦島太郎の気持ちのすれ違いが切なかったです。ページ数は多めですが、それほど長さは気になりませんでした。一つ一つの描写を丁寧にしながら話が進んでいく印象でした。6ページの浦島太郎のアップは、精神的にバランスが崩れている感じがして、何か起こりそうだなと興味が湧きました。35ページの「金があれば」「あの子たちとも仲良くなれるだろうか・・・」というセリフで、浦島太郎が竜宮城へ来た理由が分かりますが、それがちゃんとしていると言うか、切実さがあって良かったです。浦島太郎の思いが感じられました。もう少し浦島太郎の抱える孤独が具体的に分かる描写があると、彼の子供との約束へのこだわりを更に理解しやすくなるかなと思いました。
ぼんち。さん『バレちゃう。』
主人公の表情と様々なリアクションが読んでいて楽しかったです。ページをめくるたびに、照れたり動揺したり落ち込んだりと、くるくると表情が変わって、そのどれもが愛嬌があってかわいらしかったです。キャラクターの表情が、とても魅力的でした。3ページのお医者さんのニヨニヨ顔が何とも言えない微妙な表情で、おもしろくて笑ってしまいました。4ページの威圧感のある看護師さんもキャラクターが濃くて良かったです。主人公が、迫りくる尿検査をいかにして回避するかという、力の抜けたストーリーですが、おもしろく読むことができました。
大須賀健さん『蛍光灯を割れ』
「蛍光灯を割ってほしいの♡」なんてセリフは聞いたことがなく、このシーンでなかなかおもしろそうだぞと期待が高まりました。インパクトがあって良かったです。妙に明るい悪夢のような、そんな感じがしました。犬が真っ黒な背景で突然、「あんたのせいで台無しだよ」と主人公を責めるようなセリフをしゃべるのが怖かったです。シンプルなデザインなのがまた、不気味な雰囲気を高めていて、非常に印象に残りました。怖さはあるのですが、かわいらしい絵なので物語の中で起こっていることの狂気性が緩和されている感じもしました。
山岡兄弟さん『窓』
全体に不穏な雰囲気が漂っていて、おもしろかったです。11ページの書いた字がぐちゃぐちゃになっていく場面は、何か大きな変化が起こりそうで、ワクワクしました。主人公の抱えている闇が、後半の展開の悲惨さに対して大人しい感じがしたので、もう少しどす黒さがあるといい気がしました。主人公が本当に落ちていく女性を見たのか分からない、何が夢で何が実際に起きていることなのか区別できない終始不安定な、不思議な読み味でした。地獄の窓が開くシーンと開いたあとは見せ場になるので、大きなコマだとより見ごたえが増して、いいと思います。
藍銅ツバメさん『また店が開かなかった』
「やはり開店してないのが原因では」と、予想だにしないセリフがいきなり来たので、笑ってしまいました。キャラクター同士の気の抜けたやり取りがおもしろく、2ページと短めの作品ですが、とても満足感がありました。途中で登場するキャラクターがなかなか濃くて良かったです。「準備中の札をものともしない強い客だ」というツッコミだけでおもしろいのですが、そのあと「不労所得で稼げる方法教えます!」といきなりネットビジネスの勧誘を始めたので、これもまた予想できなかったセリフで、楽しかったです。
たにかわつかささん『ばーちゃんの家の竹の花』
11~12ページが印象的なシーンでした。11ページの終わりで、次に何が来るのかなと期待してページをめくると大きな絵がくる、この流れが良かったです。見開きをまるまる使っても見ごたえがあって、いいだろうなと思いました。ネームだとおばあちゃんが竹の花を見ているかどうかが分からなかったので、はっきりとおばあちゃんが竹の花を見たと分かるシーンがあるといいかもしれません。14ページで、のきばが「またねばあちゃん」と、さよならとは言わない別れ方が、さっぱりとした明るさがあって好印象でした。最後にひょっこりと竹の花が現れるラストが、かわいらしい雰囲気のこの作品に合うほっこりとした、いいシーンでした。こういう終わり方は、とても好きです。
東京ニトロさん『ワナビ16歳が生成AIと世界を救うはなし。』
大作映画の冒頭を見ているかのようで迫力があっておもしろかったです。この後どうなるのかと興味が湧きました。特に3~4ページの飛行機が突っ込んでくるシーンは、ワクワクさせられました。とても良かったです。8~9ページが状況の説明のためにセリフが多めだったので、読むのに少し時間がかかってしまいました。じっくりと読ませていくよりは、アクション映画のように迫力や疾走感があった方がおもしろいので、文字の量を減らせるのなら減らした方が、スピード感が維持されていいかなと思いました。
ひむかさん『夏の夜の夢』
蟻が制服のような、軍服のような服を着ているので実直そうな性格がイメージしやすかったです。パッと見て蟻だと分かりやすいデザインがいいですね。11ページの蟻のセリフも良かったです。ささやかな意味に着地するのが素敵でした。蝉と蟻がキャラクターとして魅力的なので、大きな絵で顔と表情を見せるコマがもう少しあってもいいかもしれません。例えば、11ページの「私はきっと君に恋をする」のところは大切なシーンだと思うので、蟻の表情や蝉のリアクションを、大きな絵で見たいなと思いました。
12ページの、蟻が優し気な顔で目をつむって蝉の歌を聴いているシーンがとても良かったです。セリフや周囲の音などがないからか、二人だけが共有している時間が流れているような感じがして、しんみりと物語に浸れました。
桐山さん『死あるいは死』
タイトルの意味が最終ページでようやく理解できるという、おもしろい作品でした。主人公がシンプルな線で描かれていて、それが後で生きてくるとは思わず、ラストは全く予想できませんでした。最終ページで一気にタイトルと絵のタッチの意味が分かる構成が良かったです。こういう楽しませ方があるんだと、興味深く思いました。全裸で外に出る展開に続けば、人に見つかるか見つからないかのドキドキがあっておもしろそうな気もしました。
七井一汐さん『アラサーがJKの制服を着て電車に乗ってみた結果』
痴漢されても恐怖を感じたりせず立ち向かう主人公がたくましくて好印象でした。3ページ最後のコマから次はどうなるのかとページをめくると、痴漢した男が「なんで?」と平然と聞いてくるのが怖かったです。話が通じない人という感じがしました。怖さはあるけれども、それほど重たい雰囲気ではない、不思議な読み味でした。コメディでもシリアスでもないような感じなので、どっちかに思い切って作風を寄せてみると、どうなるのか興味が湧きました。制服で遊園地ではっちゃける主人公は、おもしろそうだったので見たかったなあと思いました。
ヤギワタルさん『ゾンビに投げる石』
ゾンビが出てくるので、命の危険や恐怖が関わってくる話なのかなと思いきや、ほとんどゾンビが害のない存在なので、意外性があっておもしろかったです。ゾンビは何を食べて生きているのだろうかと、この世界のゾンビについて知りたくなりました。途中から本当のゾンビが登場しなくなってしまうのが、おもしろそうな設定なので少しもったいない気もしました。主人公がおじいさんをかばっているラストシーンは、おじいさんの事情を理解しただけでなく、行動が変化していて、成長を感じられ良かったです。
深田えいひれさん『ラジオガール』
2話の2コマ目が、背景の線で何が描かれているのか少し見えにくく感じました。4コマ目の力の抜けた猫の絵がおもしろかったです。猫の絵だけでラジオにした理由がわかるのがいいですね。5話の、話すことを考えている時に「なんか」を使ってしまうところや、「ってか声キメェ・・・」と思うのが、わかるなぁと非常に共感できました。もっとあるあるネタが読みたくなりました。主人公がささやかに報われるラストと、「辞める前に」「もう一本作ってみようかな・・・」という前向きだけれど前向き過ぎない、地に足が着いたセリフが好印象でした。
阿山カンフーさん『カイロガン』
1ページ目の照れている主人公がかわいらしくていいですね。異変が起こって、その先の主人公がどうなったかを見せないまま終わるのも、ホラーっぽい突き放した感じで楽しめました。1ページ使った大きな絵であるのも、インパクトがあって良かったです。3ページ4コマ目の主人公が、何となく愛嬌があっていい感じでした。4ページ2コマ目や5ページの2コマ目は、あとでトラブルが起きそうな雰囲気が出ていて、何が起きるんだろうと期待させられて良かったです。不穏さが抑え気味の印象なので、もう少し最終ページの展開に繋がるような怪しいシーンなどがあるといいかなと思いました。
高月晃太さん『保健室で許して』
花屋敷さんがベッドに寄り掛かって寝ないで黙っている抗議の仕方がかわいらしく、その性格が良く伝わってきました。先生が花屋敷さんに対してきちんと謝っているのも、好感が持てました。鼻血を出してまで先生がタバコを吸わないように見はろうとするのは驚きました。ただ、先生がはっきりとはルール違反をしていないので、花屋敷さんの真っすぐさが少しぼやけてしまっているようにも思いました。先生が、ついルールに反してタバコをちょっと吸ってしまうという展開でもいい気がしました。
藤原ハルさん『麦茶とパリと君の嘘』
4ページ~7ページは、回想が挟まる少し複雑な構成になっていますが、回想と現在のシーンとを混乱することなく読むことができました。8ページと9ページでエミリさんが、ときめいたと言う前に、セリフのない彼女の微妙な表情のコマが挟まっていて、言葉に重みと言うか、嘘をついている時とは違う何かが含まれているように感じられました。この表情だけのコマがとても良かったです。11ページの、困ったようでもあり、照れているようでもある「ありがとう」の笑顔も印象的でした。
形井中へいさん『朝熊会長は絵が描けない』
3ページで朝熊会長が原稿をのぞき込んでくるコマで、どれくらい会長がタケル君の側まで来たのか、その近さが分かると、タケル君のドキッとした気持ちが伝わりやすくなるかなと思いました。会長はタケル君に好意を持っているのか、ただ世話好きなだけなのかはっきりと分からない距離感が楽しかったです。二人の仲のこれからが気になります。タケル君が12ページで脇のあたりをアップにして、我に帰って邪念を振り払うところや、ラストで会長の写真を見てやる気を出すシーンが、おもしろかったです。
中山墾さん『お風呂のあかは残しとけ!』
6ページの「お風呂ォォォォォォォォ!!!」の主人公の絶叫と顔がおもしろかったです。また、8ページの1コマ目と3コマ目も、コミカルな表情が良かったです。あかなめが11ページで垢のおいしさに驚いた顔が、10ページでキリッとした表情をしている分、落差が大きくておもしろかったです。15ページの「汚くって最高・・・!」の顔も、かわいらしさがあって魅力的でした。16ページの1コマ目の照れている主人公の顔がかわいらしいので、もう少し大きな絵で見たいなと思いました。あかなめも主人公も色々といい感じのリアクションと表情を見せてくれるのが、楽しかったです。
明青りんごさん『夜の探し物』
ヤンキーっぽい主人公の前田くんが、かわいいものが好きで怖がりというギャップがおもしろかったです。2ページの前田くんの表情がいいですね。立ったまま頭を抱えていポーズもコミカルでおもしろかったです。ちょっぴりホラーっぽい展開に途中から入っていきますが、いくぶん怖さが控えめに感じられました。ホラー作品ではないので、それほど怖がらせる必要はないのですが、もっと女子生徒の登場シーンをホラーつぽさを強めに出してもおもしろいかなと思いました。
はやしなおとさん『ナイトパック』
8~9ページで周囲に異変が起きて、ページをめくった10ページで、何が起きているのかをドンと一気に見せる、この流れが良かったと思います。この2ページで、その先への期待が高まりました。いきなり絶体絶命の状況に陥っているので、主人公はどうなってしまうのかと興味が引かれて、おもしろかったです。どうやって脱出するのだろうと気になったのですが、意外とあっさりと外へ出られたので、一波乱あるとおもしろいかなと思いました。
感想を書くと、自分がどう漫画を読んでいるのかを考えさせられます。まだ、ふわっとした感想で、なかなか上手に分かりやすくとはいかないですね。次はもう少し、具体的に書ければいいなと思います。