「わたしひとりの部屋」を読んだ感想
わたしひとりの部屋/udn https://bigcomics.jp/episodes/64a0b2888dd0d
この作品を読んだ感想を一言で表すなら、現代日本社会の若者が共感できる話である。
物語は就活に落ちた大学4年生の主人公の女性がゲームをするシーンから始まる。学校生活や就活がうまくいかず帰省でも飛行機に乗り遅れ母から心配される主人公。そんな彼女は帰省先で想い人であるナンバと出会う。主人公とはゲームでつながっていたナンバは医学部生で忙しく最近はゲームをプレイできずにいた。主人公は彼とまた一緒にゲームをする約束をしたのだが、連絡が取れないまま時間が過ぎる。数か月後、バイトを始めた主人公は周囲になじめず孤独感を感じ、久しぶりにナンバと連絡を取ろうとする。ところが、ナンバは自殺してしまていた。落ち込む主人公はバイト先でも怒られ、望まない人生を送る自分自身を憂う。物語のラストで彼女はゲームのランク昇格戦を行う。見事勝利した主人公はランク昇格という達成を手に入れる。ゲームを終えた彼女がコンビニで買ったラーメンを食べるところでこの話は終わる。
この作品の面白いところは、主人公のモデルを現実に存在する日本の若者にしていることで、作品にリアリティを持たせているところである。内閣府の統計によると、日本の若者は諸外国と比べて諸外国の若者と同程度かそれ以上に規範意識を持っており、職場への満足度は低い(注1)。この物語の主人公も、就職できずゲームばかりしている自分のことを恥ずかしい/嫌だと自分で思う場面が何度もある。また、働くことが好きでないにもかかわらず働いている。さらに、主人公の感情が彼女のプレイするゲームも現実に存在するものである。作中に出てくるナンバとプレイしようとしたゲーム「オーバーウォッチ2」は実在するゲームであり、物語終盤で彼女がプレイするゲームは実在するゲーム「VALORANT」と非常によく似ている。どちらも若い世代に人気のゲームである。現実と若者と共通する感覚を持ったマンガの中のキャラクターが実際に存在するゲームをプレイすることで、今を生きる若者たちはこの話は現実に起きていることなのかもしれないと思わせるような話になっているのである。
注1. 内閣府ホームページ 特集 今を生きる若者の意識~国際比較からみえてくるもの https://www8.cao.go.jp/youth/whitepaper/h26gaiyou/tokushu.html