【アニメ】劇場先行版『機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-』を見たよ【No.4】

情報公開後、みんなが「庵野ガンダム」と連呼していてとてもかわいそうであったところの『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』の劇場先行版アニメーション『機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-』を見た。

気づいてなかったけど、大本となるTVシリーズタイトルは『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』で劇場版にはBeginningがつく。そんでもって、このBeginningが大問題だったわけだが、それはガンダム好きからの視点であって、ぼくはBeginningパートのことをそこまで快く思わなかった。

とはいえ、Beginningがあったおかげで「ガンダム」の快楽と「アニメ」の快楽が異なるものだというのがはっきりわかったのでそこには感謝したい。Beginningが「ガンダム」側で、GQuuuuuuXが「アニメ」の側だ。初代やBeginningにかかわるクリエイターの基礎能力が高すぎてわかりにくいが、「ガンダム」にある主な快楽は線や動き、カットのリズムによる情緒的な快楽＝「アニメ」の快楽ではなく、知識遊びなどの”あえて”を自覚したり、謎解きと称して言葉遊びにふけるような、露悪的に言えば「インテリ」的な快楽に近い。ガンダム好きたちが”ガンダムアニメ”を見てもアニメの話はせず、終始ガンダムの話ばかりをするのはこのあたりに理由があるのではないだろうか。

Beginningパートは、簡単に言えば＜ガンダム史の中での『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』の位置づけ＞を説明するためのもので、尺でいうと30分弱ほどになる。連邦軍（要はアムロとかのほう）とジオン軍（要はシャアとかのほう）の勝ち負けがそれまでのガンダム史（ファンの人たちが宇宙世紀とか正史とか言ってるやつ）とは逆で、「ジオン軍がガンダムを鹵獲して、連邦軍に勝った世界戦の話ですからね」ということを丁寧なアニメーションと狂気的なパロディを用いて説明していく。一方で一部のメカデザインはGQuuuuuuXパートへつなげるためにリニューアルされてい上に、３Dアニメーションの出来がすこぶる良いので、見どころの一つだ。

さて、ではなぜぼくにとってこのパートがそこまで快くなかったか、という話なのだが、これはひとえに「BeginningパートとGQuuuuuuパートは単に別のアニメであって、同じタイトルの作品だというのは傲慢が過ぎる」と感じるからだ。

具体的にいこう。

もっとも傲慢に感じたのは、同一世界を描くフィクションのはずなのに、BeginningパートとGQuuuuuuXパートでは何から何までルールが異なっている上にそのことに関する説明をする気がないところだ。

BeginningパートとGQuuuuuuXパートでは人物のデザインルールが全く異なるばかりではなく、セリフ回しや声優の演技プランまで、人物造形にかかわる多くのルール設定が異なっている。これは、パンフレットや設定集を読んだらそうだった、ということではなく単に見た目が明らかに異なるし、しゃべり方やしゃべり言葉の語彙数が全く異なるというレベルでの話だ。さらにはこの人物造形のルールがちぐはぐなために、BeginningパートとGQuuuuuuXパートでは世界そのもののルールも変わっているようで、生活レベルやキャラクタンーの行動理由（つまりはその世界の教育レベルや思想的な背景）までもが、前後のつながりがなく入れ替わったように感じる作品になっている。

シャアとニュータイプの下りで異世界ワープをにおわせていたしこれらが意図的なものならそれでいいのだが、これは－－パートをまたぐにあたって時間経過があるような雰囲気を出してはいたが－－作品内の演出から感じる時間の飛躍からは到底納得できないほどの差異である。アニメなのだからこの違和感を別の何か――線の動きでも音でも、カットのリズムでも何でもいい――で覆い隠してくれればいいのだが、そんなこともない。

嘘やデタラメを描くな、ということ話ではなく、それらを使って何をやるのか/やりたいのかに一貫性が感じられないのだ。これではぼくはクリエイターの何を信じたらいいのかがわからない。とても悲しい気持ちになった。そのくせして、GQuuuuuuXパートのキャラ絡みやアクションシーンには先述した「アニメ」の快楽があって、ぼくは、この映画はガンダムを好きな視聴者のことを舐めているのかな？と思った。

本編はTVシリーズらしいので、その結果次第では手のひらを反すのかもしれないが今一番書き残しておきたいことはこれである。

あ、うそ。ひとつ書き忘れ。

歌の使い方が総じてひどい。なんだあのとりあえず雰囲気まとめるためだけに置いときますか的な使い方。

Beginningでわけわからんこだわり方してるんだからこっちにも同じくらい本気になってくれよ。頼むよ。

おわり