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【ワークショップ】ゲスト講師は夏目房之介先生!~マンガの読み方・評し方~


2024年7月20日、言わずと知れたマンガ評論の大家、夏目房之介先生をお招きしたワークショップが行われました! 普段の作品講評回とは異なり、マンガの読み手として、マンガを評することとは何かを学ぶ回になりました。

 

実は、夏目先生にはこれまでゲンロンカフェに2度ご登壇いただいており、昨年はさやわか先生、センパイ大井昌和さんとの鼎談が実現しています。その様子は現在シラスで再公開中、『ゲンロン16』にも文章のかたちでまとまっていますので、ぜひご覧ください!

 

授業前半、さやわか先生とトークを交わす夏目房之介先生。2024年7月20日(土)。

 

さて、講義は夏目先生とさやわか先生のトークから始まりました。
「描くマンガ評論家」としてのキャリアのお話に始まり、マンガ批評と大学におけるマンガ研究の関係、そして現在取り組まれているお仕事や今後の展望など、たった1時間余りとは思えないほどの厚みと情報量。夏目先生の個人史とともに、マンガ(批評)史を一気に駆け抜けたような感覚に💨

 

夏目先生のお話の中では、
「模写とかパロディってそもそも批評なんですよ」
「マンガはモダンジャズに近い。コード進行だけが決まっていて、その上でどれだけ暴れられるかが勝負」
といった名言が連発!

 

また、「読者のリテラシーがマンガを支えている」ともおっしゃる夏目先生。伝説の番組「BSマンガ夜話」にも話が及びました。
インターネットが普及した90年代後半から2000年代にかけて、「いい大人がマンガに熱をあげ」て語り尽くす番組が果たした役割は非常に大きかったと言います。さやわか先生もその影響を受けて今のお仕事につながっているという、熱い世代間リレーを感じさせる一幕も。

 

受講生の作品を講評するさやわか先生と夏目先生。2024年7月20日(土)。

 

続いて、受講生のこれまでの課題作品の講評に。
ふだん、賞の選考はしないと決めており、アマチュアの作品を見る機会は少ないという夏目先生。目の前で講評され、直接対話ができるという機会を得た受講生の皆さんは本当にラッキー!✨  一読で自分の手癖を見抜かれて「図星だ!」の反応がちらほら。

 

最後は、今回のテーマ「マンガの読み方・評し方」に沿った課題の講評。受講生には事前にマンガ評論文を書いてもらいました。
言葉のプロであるお二人からは、厳しくもポイントを突いた納得の解説が👀
「主観的・直観的に掴んだものにこそポイントがある」
「『魅力的』の先の言葉を見つける」
などなど、ふだんの授業で教わっているマンガの描き方にも通ずるものがありました。
受講生の皆さんには、このサイトでどんどん評論文も書いてほしいです!(^^)!

 

🔽今回、講評された作品は以下。

(各コメントは夏目先生から事前にいただいた講評文です)

▪️さとりさん 『インドネシアティダアパアパ巡り

 一応面白いし、そつなくまとまっている。唯、肝心の山の日の出と火口の絵が力不足。印象に残る構図を工夫してほしい。朝日の感動、「地球」の感動が伝わってこない。
 あと現地のこまかなリアリティが伝わる小さなエピソードが2~3ほしい。いつもぐだぐだ昼寝しているのに夜になると吠えて怖い犬とか、プライド高そうなニワトリとか。

▪️zinbeiさん 『元・人間一回目の比較的スムーズな旅

 主人公の女性が魅力的なので、立場、動機づけが最初に短く紹介されるといい。肝心の「人間一回目」はもう少し説明が必要かも。P2「無計画でよく行動するかららしい」では、よくわからない。
 よくまとまっているが、主人公が前に出すぎか。「彼女をかわいく描く」が先に立ち、比べて話の客観性を示す絵が小さすぎる気がする(P3上段はいいが、P6三柱鳥居はもっと大きいほうがいいのでは)。逆に大きく描かれがちな主人公が浮き立ってこない気がする。無駄なコマも多いかも(P4の図書館の書名は1コマでいい)。落ちの「お婆さんほどじゃない」はめくり効果も含め、とてもよい。ただ「お婆さん」という表現がよかったのかどうかは、ちょっと気になるか。

▪️イドガネさん 『じいちゃんの手

 おそらく素の自分からくるだろう間の生むフラが魅力。大事にしてほしい。絵の「不器用さ」もそこに同調している。たとえばP1下段のタンスの筋線などが妙に面白い。話もよくできていて、P14、15の手も、一生懸命描いただけあって印象に残る。

▪️夢叶羽どどどちゃんさん 『新人バイトのヤバい趣味

 掲載媒体も具体的で、これといって問題はないかと。ただエロ雑誌の編集なら、何らかの形でせめて胸の谷間やふとももくらいは出してほしいとか、いいそう。そこが狙いなのかもだが、そこまで読み取れない気もする。「適当」という言葉を使った落ちはなかなか秀逸。

▪️どんどこすすむさん 『河川敷レトロ

 タイトルはやや意味不明。P4の子どもの頃のケン坊の顔がいい。
 背景は、確かに考えられていて、頑張っている。話も破綻なく、読後感もいい。女の子がもっとかわいいといい、という意見もあろうが、逆にこのほうがいいともいえる。男前な魅力もあるし。

▪️藤原ハルさん 『夜を泳ぐ魚たちは
 (第6回ゲンロンひらめき☆マンガ大賞受賞、第90回ちばてつや賞ヤング部門大賞受賞)

 完成度高い。作品として出来上がっているので、あまりいうことはない。P45の雪のコマも効果的な間。絵のレベルも高く、少女と老人の対比もよいと思う。老人(私と同じくらいだが)の雰囲気、台詞も印象に残る。

 

🔽受講生の評論文は以下からご覧いただけます。

▪️タイラーさん
 失われた30年と『東京ヒゴロ』

▪️春心さん
 【WS】レトロとの距離 どんどこすすむ「河川敷レトロ」を読んで

 【WS】サスペンスの怪物 浦沢直樹「MONSTER」を読んで

▪️由月さん
 『河川敷レトロ』が誘う思春期へのノスタルジア

▪️Karaageさん
 『愛とは、自己本位な「部分」への偏愛から始まる、「連続した関係性」~イドガネさん「じいちゃんの手」感想~』

 『言葉にできない感動が、地球的視野を与えてくれる海外観光の魅力を伝える表現力を与える~さとりさん「インドネシアティダアパアパ巡り」感想~』

▪️オカピさん
 【7/20用課題感想文】『河川敷レトロ』を読んで想い出された私の記憶

▪️渡邉清文さん
 【WS】zinbei「元・人間一回目の比較的スムーズな旅」に人生の楽しさを教えられる

▪️ohashiさん
 空間を描かずに「空間」を描くということ

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