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【投稿コース】第6期 投稿コース講評:『新聞配達』【8月分】


ひらめき☆マンガ教室第6期から新設された投稿コースでは、月に一度、ひらめき☆マンガ+内に投稿したマンガの中から自由にひとつの作品をえらんで講評を受けることができ、内容はひらめき☆マンガ+で公開されます。

 

第6期、8月分の講評には全5作品の申込みがありました。本記事では、くじくじらさんの『新聞配達』の講評をお伝えいたします。

 

4.『新聞配達』くじくじらさん
講評:さやわか先生 

 

受講生アピール文

新聞配達が舞台ということで、夜中という状況でのキャラ同士の掛け合いを楽しむようなマンガを目指して書きました。

くらげバンチと週間チャンピオンに持ち込んだのですが、いずれの所でも、夜中という状況や雰囲気をもっと描写するかキャラ同士のやり取りが小粒で、そこから見えてくるキャラクター造形も地味だから、もっと話に演出をきかせるかどちらかをしたほうが良いと言われてしまいました。
書いている最中は気づかなかったのですが、言われてみれば確かに世界観や雰囲気を描くようなものにしては描写が無く、キャラ同士の人間関係の変化を描くようなものにしてはちょっとしすぎているのかなと思います。

今気になっている点としては、描き始める時は、「こういう人に向けて…」と考えたつもりで描きだすのですが、描き終わると設定などが他のものでも全然成立するものだったり、やりとりも思ったより面白みの内容なものになってしまい、それに気付けないことです。

これからよろしくお願いします。

 

 

講師講評(さやわか先生)

くじくじらさん、ご投稿をありがとうございます!

 

こちらの作品については、別のところでもご講評差し上げたのですが、あらためて、「ひらめき☆マンガ教室として」のアドバイスを差し上げたいと思いますので、よかったらご参考いただければうれしいです。

 

とはいえ、持ち込みをした際に言われたことというのが、正直僕が前に申し上げたのと似た内容なのかな、と思いました。つまりこのマンガは、スラスラと読めてしまうし、達者なのですが、このエピソードだけだとちょっと小さすぎるので、①人間ドラマの盛り上がりを大きくする(つまりキャラの描写と関係を強調する)か、②そういうふうに大きく盛り上がる話でないのなら、このシチュエーションを使ったこのくらいの規模のエピソードを連続させた小エピソード集としての形を作る、などの工夫が必要だということです。

 

くじくじらさんご自身は、①と②、どちらを目指してこれを描いたのでしょうか?どちらでもいいのですが、そもそも、読んだときに、読んだ人が、あ、これは①と②、どっちを目指しているんだなとわからないとまずいと思います。

 

ただし!!②だとしても、キャラとしてはもうちょっと前に出てほしい気はしました。たとえば、この主人公はどんな性格の女の子なんでしょうか?それが分かる部分が、このマンガの中には、ほぼ、ありませんでした。マンガというのは、めっちゃ単純に言うと「ある性格の人」と「別の性格の人」が対話しているんだなという形になっていなきゃいけないはずですが、片方が何者なのかわからないまま話が進んでしまうわけです。

 

まして、この人は主人公ですから、物語の最後で彼女の現実認識が変わってすら、いいはずです。たとえばちょっと成長したり、たとえば深い安らぎを得たり、たとえば達成感を得たり。そういうことがあると、読者は「ああ、この人は最初こうだったけど、最後はこうなったのね。そういう話だったのね」と思います。マンガって、そういうものなのです。

 

一方で、先輩の方はちょっとだけ雑さと気遣いのバランスのある人なんだなということがわかるようになっていますが、それも、このページ数を通して、全体の中でようやくじわっとわかってくる程度なので、少々もったいないです。その性格を踏まえて、この二人がどういう関係を成すかをみせるべきなのが、「この人はこういう人かもしれない」というところで終わってしまうわけです。

 

さらにいえば、大事なのは、この両者の性格や会話や、最後に訪れる結果が、「新聞配達」や「深夜」という、この物語が独自のものとしてやろうとしている設定(登場人物たちの立場、場面のシチュエーションなど)と結びついて表現されるべきです。それができていれば、この作品は「深夜だから」「新聞配達だから」「この主人公で」「この先輩の」「こういう会話の」物語である、という各パーツが、全部噛み合ってきます。逆に言うと、そうしなければ、くじくじらさんが書かれていたように、他のシチュエーションでも、他の人物でも、別にいい、ということになってしまいます。物語自体がぼんやりした印象を与えるとしたら、そのせいです。

 

めっちゃ単純な例を挙げましょう。たとえばこの主人公が、「深夜のバイトなんて人がやるモノじゃない、やらなきゃいけなくなって、嫌だ」と思っている、という設定にしてみましょう。すると、序盤のほうではそういう描写を多めにやることになります。もっと主人公は嫌そうにしてなきゃいけないし、先輩に対しても、深夜バイトってこんな人ばっかりなのかな、嫌だな、とか思っている描写を強めにいれなきゃいけないはずです。
しかし、後半のジュースを飲むくだりの「この先輩ちょっといい人ではあるのかも」とわかるあたりで、半ページとか1ページとか見開きとかの大ゴマを使って、夜の公園の情景とかを大きーく描くわけです。で、そこにぽつんと「先に謝っておこうと思って」とかの先輩のセリフを入れておくと、印象は全然変わってきますよね。静かな夜に公園で謝られることが効果的になってくると思います。さらにいえば主人公の夜のバイトに対する偏見とかがここで「意外と夜もいいかも」という気持ちに変化してくるかもしれません。

 

勘違いしないでいただきたいのですが、以上は一例でして、この通りにするのがベストというわけではありません。大事なのは、さきほど書きましたように、シチュエーションとキャラクターは関連付いていないといけない、ということです。この、深夜の新聞配達というものを通して読者に思わせたいことは何なのか?を考えて、それを、ちゃんと(最初はそうは思っていなかったけど)最後に主人公が思うか、主人公の姿を見て読者がそれを実感するところまで持っていかないといけないと思います。

 

描き始める時に「こういう人に向けて…」と考えるというのはとてもいいことです。しかし、想定読者を決める上で大事なのは、じゃあその「こういう人」って、どういう物語を読みたいんだろうか?それを読んで、どんな気持ちになりたいんだろうか?さらには、作者自身としては、その人たちにどんなふうに思ってほしいのか?…を考えることです。

 

想定読者を考えるのは、すなわち、それを考えることです。「くらげバンチ読者」「チャンピオン読者」と言うならば、その人たちが何を読みたがっていて、何を思いたいのか、その人たちに自分が何を思わせたいのか、を考えましょうということですね。「くらげバンチ読者は、こういうものを読みたがっていて、だから自分はこういうキャラを描く。そういうキャラを出すから、深夜であり、新聞配達であることがうまく効いてくるんだ」と言えるのが、ベストです。

 

感想としては以上になるのですが、いかがでしょうか?よろしければ今後の作品づくりに活かしていただければ、たいへんうれしいです。どうぞよろしくお願いいたします!

講師講評ここまで

 

以上になります。

くじくじらさん、講評にお申込みいただきありがとうございました!

おわり

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