課題5 完成稿の感想
課題5、「もしあなたが人魚姫の主人公だったら」完成稿の感想です。ネームの感想で触れた点については、こちらでは繰り返して書いていない場合があります。
完成稿の感想は初めての投稿になります。ネームから読んでいると、完成稿は読みごたえが増して、おもしろいです。とても楽しく読むことができました。
形井中へいさん『あの夏、いちばん愚かな海。』
3ページ5コマ目の人魚が頭に浮べている犬と、次ページで人魚姫がイメージしている犬っぽい謎の生き物との落差がおもしろかったです。人魚姫の想像する犬が、これはこれでゆるキャラっぽくてかわいらしかったです。人魚姫の表情と、イメージしている犬のユーモラスな姿とのギャップがいいですね。真剣な顔でちょっと間が抜けた犬の姿を想像しているのが、おもしろかったです。
6ページのいきなり攻撃してくるクマが、ネームより更に怖さがパワーアップしていて、良かったです。
10ページ1コマ目の人魚姫がかわいらしく、次のコマで王子が人魚姫に見とれて顔を赤らめている理由が分かりやすくなっていると思いました。
14ページの3コマ目「あとイヌもつれてこい!!」の人魚姫がコミカルで愛嬌がある魅力的な絵でした。
大須賀健さん『筆談!伝われ!最後の夜!!』
7ページ2コマ目「やっぱまだ怒ってる!?」のシーンの、人魚姫の字を書く勢いが増しているのがいいですね。ネームでも、ここは結構好きなシーンだったので、その次のコマでも勢いがとまらずにまだ書き続けているのが楽しかったです。
9ページ4コマ目の涙ぐんでいる人魚姫に完成稿では影が描きこまれていることで、その悲しみが深まっている感じがしました。表情だけでなく、光と影の表現も大切なんだなと感じました。
11ページ2コマ目、ネームの感想で書いた際にも魅力的なシーンだったのですが、朝日に照らされていて、より印象的ないいシーンでした。
たにかわつかささん『方向音痴の人魚姫』
ネームよりも、細かく区切られたコマが減って、読みやすくなっていると思います。ネームでは、もう少し小さいコマが多くてこまごまとしていた印象でした。ネームも色々なものが詰め込まれていて、にぎやかで楽しいのですが、完成稿の方はすっきりとしていて、何が起きているのかが分かりやすかったと思います。
5ページ5コマ目では、海の深さを感じられました。このコマでスッと視界がひらけた感じがしました。海の中にひろがる米つぶも雪のようで、とてもきれいでした。
6ページ1コマ目のお米を食べるシーン、6ページ2コマ目の「うんまあああ」が、とてもチャーミングで良かったです。人魚姫のかわいらしさが伝わってくる、生き生きとした魅力的な場面でした。6ページ1コマ目の表情の中で、特に「あむあむ」の顔が好きです。
14ページの夜空とクジラのページも、1ページ使った大きい絵であることで、夜空のひろがりと、危機的な状況からの解放感が感じられて、とても良かったです。読んでいて心地いい場面でした。
深田えいひれさん『代償』
最後のコマの魔女がネームと違って、怒りの感情がはっきりした濃いキャラでした。ネームの時はあまり強い怒りではなく、イラっとしているくらいに感じましたが、完成稿ではしっかりキレている描写になっていますね。淡泊な反応の魔女もいいですが、薬のビンを割るほど怒っている魔女のインパクトのある表情がおもしろかったです。魔女の存在感が増した気がします。
3ページ4コマ目の人魚姫のセリフが「ちゃんとシミュレーションしてきたんか?」と魔女をより挑発するようなものに変わって、人魚姫のイヤな感じが強化されていて、魔女の怒りにさらに同情しやすくなったかなと思います。
あい乙いなびこさん『ナナ、人間を好きになる』
露になったこどものお尻がつるんとかわいらしく描かれていて、いいですね。3ページで目を丸くして驚いているナナの顔がおもしろかったです。ネームと少し表情が変わっていて、ネームでは怖いものを見るような表情でしたが、完成稿は頭の整理がつかずにキョトンとしているような、そんな感じがしました。コミカルで良かったです。
4ページの2、3コマ目、おしっこをした後の、こどもの堂々とした様子もおもしろかったです。やってやったぞという感じが強まっていてユーモラスでした。
5ページ4コマ目のナナは、ネームの困ったように照れている表情がかわいいなと思っていたので、完成稿で照れた感じが控えめになっていたのが、ちょっぴり残念でした。
ヤギワタルさん『人魚は海に帰れない』
14ページ1コマ目で、「どうしようこのままだと・・・」「ただ死んでいくだけだ」と、人魚姫が悩む場面が追加されて、その後の決断に至るまでにワンクッション挟まっているので、人魚姫の心情の変化が飲み込みやすくなっていると思います。丁寧で良かったです。
15ページの1コマ目では下を向いていて、まだ考えが浮かんでいない。2コマ目で顔をあげることで、ここで心が動いて前向きな何かを見つけたことが伝わる。このシーンがとても良かったです。
人混みを抜けて、一人になっていくのも、いいですね。最後のページで、黙々と書いている人魚姫とは対照的に周囲が騒がしいことで、孤独感と強い意志が感じられて、とても印象に残るいいシーンでした。
阿山カンフーさん『もっこす人魚姫』
もっこすの説明があることで、人魚姫がどんな性格なのかが分かりやすくなったと思います。
2ページ3コマ目の、魔女の眼のアップは恐ろしげで、ここからシリアスになるかと思いきや、次のページでポカンとした顔が来て、おもしろかったです。ネームよりも魔女が登場時、怖い感じがしました。なので、魔女のとまどう顔のシーンとギャップが強まって、コミカルさが際立っていて良かったです。人魚姫の眼の形がネームと変わったように感じました。ネームではおっとりとした印象だった人魚姫が、目が鋭い形になっているからか、おっとりとした雰囲気は保ちつつ、意志の強さが加わっているように思いました。迷いなくつきすすんでいく人魚姫に好感が持てました。
山岡兄弟さん『人魚姫』
ネームと大きく変わったのは、マリの口調が関西弁になったところでしょうか。口調が変わっていて、マリへの印象がちょっと変わりました。関西弁になっていることで、大雑把そうな性格に感じられました。方言だと、くだけた印象になりますね。マリに特徴と言うか、個性的な部分が加わり、どんな性格か分かりやすくなった気がしました。
高月晃太さん 『にんぎょひめ』
2ページ目のナレーションが、ひらがなが増えたことで表現が平易になって、童話のような雰囲気が出ていたと思います。かわいらしいキャラクターと平和なやりとりで進んでいった後、8ページで、かなりすごいことが起こったので、ギャップに驚きました。ただ、あくまでも雰囲気は童話のような、かわいらしい感じなので、起こっていることのすごさと温度差があっておもしろかったです。生々しくなり過ぎていない気がしました。過激なことをしても、その過激さが、かわいらしい雰囲気で緩和されて伝わってくるような、そんな感じがしました。
明青りんごさん『Flower of Bubble』
王子がネームより少し大人っぽい感じになっていましたね。5ページ2コマ目で、喜んでいる顔が光に照らされていているのも、とても良かったです。
5ページの1コマ目も良かったです。水しぶきのようでもあり花火のようでもあって、水の花火とでも言えばいいのでしょうか。それがとてもきれいでした。魅力的なので、もっと大きなコマでも素敵だろうなと思いました。
藍銅ツバメさん『人魚の三文小説』
魔女の足の存在感が増して、魔女も人魚姫みたいに腰から下が海の生き物になっているんだなとネームでは気に留めなかった点に気が付きました。2ページ目の1コマ目で、魔女の足がコマからはみ出しているのが、おもしろいですね。
3ページの3コマ目に、魔女が小説を読んでいるコマの間に海中の絵が挿入されていることで、時間の経過が感じられ、魔女がある程度の時間をかけて、人魚姫の小説を読んだんだなと分りました。
桐山さん『あの子に』
7ページ~8ページの一連のシーンが、ネームでもいいなと思っていたのですが、とても良かったです。特に8ページで涙を浮かべている人魚姫のコマが、ペン入れされたことで、よりきれいで印象に残りました。
12~13ページの耳を切り落とすシーンも痛々しさと迫力がペン入れによって増して、人魚姫の思いがより強く伝わってくるように感じました。また、切り取られた耳から、泡が出ているのも良かったです。最終ページの意味がとても分かりやすくなったと思います。最後のページの切なさが、とても良く伝わってきました。
やながわけんじさん『リンゴ』
ネームでも人魚姫の瞳が印象的だったのですが、ペン入れされていることで更にインパクトが増して、魅力的になっていたと思います。4~5ページで人魚姫の服装が変わっているのも、丁寧さが感じられ印象的でした。
2ページで「上手に剥けたら見せてね!」と王子が人魚姫に言うのは良かったです。これで、14ページで王子の側にどうしてリンゴが置いてあるのかが、とても分かりやすくなりました。でこぼことしたリンゴも切なかったです。
15ページの1コマ目の微笑んでいる人魚姫がとてもいいなと思いました。目尻に泣いた跡が描かれているように見え、穏やかな笑顔の中の悲しみが感じられて、心動かされました。
藤原ハルさん『人魚の葬送』
背景が丁寧に描き込まれていて、一つ一つのコマがきれいで、読みごたえがありました。
最後のページの変更点は、とても良かったと思います。人魚姫がひとりで気持ちを噛みしめている、周囲からひとりだけちょっと取り残されているような、そんなシーンかなと思いました。人魚姫だけが王子とシャムスを見送っているのが、その孤独感を伝えていて、いいですね。姉たちと一緒にいるけれど完全には一つになり切れず、行き場所のなさを抱えたまま佇んでいるようでした。人魚姫の心の内がはっきりとは描かれない分、想像する余地があるのが、とても良かったです。
ぼんち。さん『水の泡沫。』
2ページ1コマ目の「絶対」「嫌!」の表情がかわいらしく、ネームより人魚姫のかわいさが増しているように思いました。「なんで?僕王子だよ?お得だよ」の王子のぴえん顔など、コミカルなところもパワーアップしていて、おもしろかったです。
11ページ「ウソツキ」の人魚姫の瞳に光がなく、アピール文にもありました「ヤンデレ」っぽさが増していて、ネームではあまり感じなかった狂気的な雰囲気がありました。15ページ、真っ黒な「離さないから」のコマも、ホラーっぽさがより強くなっていて良かったです。
最終ページでは、王子の苦しそうな顔が印象に残りました。更に印象に残ったのは、王子が苦しんでいるのに、かわいらしい笑顔を浮かべている人魚姫の怖さでした。ペン入れされていることで、苦しむ王子の様子や笑顔のかわいらしさが、よりはっきりして、人魚姫の「ヤンデレ」感がよく伝わってきました。
ほりい泉さん『GAME』
セレーナの輪郭や眼がしっかりとした太めの線で描かれているので、表情の印象がはっきりとして、意志の強さや緊迫した雰囲気が伝わってきました。また、死を意識させるようなシーンでは画面が暗くなっているのも、いいですね。
14~15ページの、セレーナが消えなかった理由が明かされる場面の説得力が増していて良かったです。13ページで「いやだ死にたくない」「まだこの景色を見ていたい」とセレーナが生きたいと強く願うシーンがあるので、15ページの「私は生きたいと願っただけ」のセリフが、すっと入ってくる気がしました。
アキオさん『後悔』
ペン入れされて、絵がすっきりとして読みやすく感じられました。また、1ページの4コマ目や2ページ3コマ目で背景が真っ黒になっているところが、ネガティヴな雰囲気が強調されて、人魚姫の気持ちが分かりやすくなっていたと思います。
3ページの魚たちがかわいらしくていいですね。
シンプル寄りの絵柄なので、アピール文で触れられていた目や口の描きこみは、それほど気になりませんでした。
中山墾さん『姉は、人魚姫40歳』
お姉さんが、不器用ながら頑張っているのが、好感が持てました。妹も表情がかわいらしく、魅力的でした。
2ページの眠っているお姉さんが、よだれを垂らして眼が3みたいになっていて、おもしろくてかわいらしいかったです。ネームを読んだ時には、気づかず読み飛ばしてしまったのですが完成稿では、目に留まりました。
2ページ~3ページのお姉さんが眼鏡をかけるシーン、4ページの壁の模様など、細かなところが丁寧に描かれている印象がありました。そこから感じられる繊細な雰囲気がとても良かったです。
13ページの二人が上昇していくシーンが、よりきれいになって、13~14ページの流れの心地よさが増していて良かったです。
まだまだ拙い感想ですが、少しでもモチベーションの足しになれば、うれしく思います。