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【読み方課題1】マテリアル・パズル 〜神無き世界の魔法使い〜 土塚理弘


0.はじめに

マテリアル・パズルはJRPG漫画の一つの極北にある。
いま、異世界転生漫画が流行っている。同時に、MMORPG(≒MORPG)漫画も流行っている。
異世界転生において転生するゲーム世界も、そのほとんどがMMORPGを踏襲している。
一方で、マテリアル・パズルが表現しているファンタジー世界はJRPG世界観だ。
かつての「ドラクエ」「FF」、そして「クロノトリガー」「テイルズオブ」といったJRPGの名を冠したゲームたち。
それらを血肉として漫画作品として成ったのが、マテリアル・パズルだ。

1.作品概略

マテリアル・パズル 2002年2月号から2007年7月号 月刊少年ガンガン
マテリアル・パズル 〜彩光少年〜 2008年7月号から10月号 月刊少年ガンガン
マテリアル・パズル 〜神無き世界の魔法使い〜 2018年7月号から2022年11月号 月刊モーニングtwo

2.あらすじ

ウィキペディア曰く「100余年前、ある惨劇に巻き込まれたことで、不老不死の身体に魂を共有することとなった3人が、魔法という力と仲間達を得て、背負った罪を償うべく、惨劇を起こした者との闘いに身を投じていくバトルファンタジー。 」である。

3.感想

この作品は「存在変換」という設定が漫画1巻から登場し、少年ミカゼが岩山の頂上に住むロリ魔法使いに助けを求めたところ、毒で死んでしまい、「存在変換」で別人に切り替わるという展開・設定でまず魅了してくれる。
朴念仁だが未来予知まで可能な計算能力を有する青年ティトォと、飴玉を武器に強力な魔法を使うロリツインテ少女アクアと、最強の身体能力・格闘技能をもつ妊婦プリセラという個性豊かな3名が死ぬたびに入れ替わることによって不死身となっている。3人の主人公が死ぬことで切り替わり交代交代で主人公するというのは、アイデアとしてはいいがストーリーとしてしっかりと描けるかな?という類のものであるが、著者はこれをしっかりとコントロールし、見せ場として機能させている。
例えば、初めて「存在変換」を行ったところでも、え?死んじゃったけど?という驚きと、「存在変換」のエネルギーを感知されて敵に発見されるという展開を同時にやってのける物語構築にあると思う。設定の面白さ、それを扱う物語のうまさが、この作品にはある。
これは設定として面白いが、この作品の面白さは設定だけではない。

がわの設定だけでいえば、この作品は多くのバトルファンタジーの一つといえる。主人公の不死身の力を奪うべく、女神に狙われる。
女神に従う魔法使い「女神の三十指」、特に強力な「五本の指」、さらに強力な女神の剣「三大神器」、といった具合にバトルファンタジーをして戦い続ける。

この「バトルファンタジー」を基本的にギャグ・コメディ作品のような軽いノリで戦い、ときどきかっこよく戦うというのが、JRPG漫画と最初に言ったところにある。ギャグ、コメディに定評のある作者ということもあり、いたるところに緩いマスコットキャラが出たり、描写の仕方がギャグ・コメディ的なものが漂った雰囲気にある。
これは、「テイルズオブ」シリーズにある「スキット」に近く、真面目でシリアスなストーリーの中に、定期的にキャラ同士の寸劇をはさむ。プレイヤーを飽きさせまいとするが故のスキットは、ときに、本筋のストーリー以上にキャラクターを魅力的にさせる。

女神と世界の存亡をかけた一本道のバトル・ファンタジーであるが、行く先々で仲間・敵と出会い、コメディ・ギャグの作風に近い話の展開で物語を転がしていく。そのことによって、深刻で辛い過去を持ち、自らを罪人と断ずる主人公の物語を、楽しませる力がある。辛く重たい物語も、ファンタジーの魅力ではある。しかし、そういった中でも明るくおかしく物語を展開してく。
これがまた、土塚理弘作品の魅力である。

設定もりもりの壮絶バトルファンタジーとギャグ・コメディ調の魅力的なキャラクター。
相反しそうなこの二つを1作品に閉じ込めたのが、マテリアル・パズルだ。

一つ予防線を張っておくと、本作におけるネガティブな感想として出てくるのが絵についてだ。
絵が合わない。という人はいるかもしれない。
それでも、この漫画を面白く読めるのは、ギャグ・コメディで培ってきた作者のキャラクターの瞬発力のある魅力的な描き方、画力を求められにくいギャグ寄りの描き方によるものだと思う。さすがに、後半はプロ20年目ということもあり上手なのだが、バトルファンタジーの巨星たちと比べると、この点においてはやはり弱いと思わざるを得ない。
一方で、その画力・画風であっても、これだけの巨編を描き切った著者は土塚理弘をおいてほかにいない。

バトルファンタジーを描きたい!と誰しも思うことだ、同時に画力がなと思うことだろう。
けど、画力じゃないと作品で語ってくれたのがマテリアル・パズルであり、わたしはその熱量を浴びた読者の一人だ。

ちなみに、主人公3人の物語は完結したが、世界の物語はまだ続くらしい。(ある程度の)と断ったのはそこにある。
そういえば、テイルズオブディスティニーでは息子が主人公のゲームがありしましたが、そういうところもJRPG感がある作品だと感じた。

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