ゲンロン ひらめき☆マンガ教室 第6期 課題3 「 肉体的接触があるクライマックスシーンを描いてください。」ネーム感想
こんにちは。あおたかです。
今回は課題3 「 肉体的接触があるクライマックスシーンを描いてください。」のネームの感想を書きました。
今回の課題
肉体的接触があるクライマックスを名シーンのように描いてください | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト肉体的接触があるクライマックスを名シーンのように描いてください | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイトゲンロン ひらめき☆マンガ教室は、主任講師を評論家・マンガ原作者のさやわかが務め、幅広くマンガ界で活躍する人材を育成していschool.genron.co.jp
・何かしらの肉体的接触があるクライマックスシーンを描く
・クライマックスシーンは思い切り名シーンのように描く
この二つの条件を満たす必要があります。握手・ビンタ・キス・パンチ・抱擁など接触の仕方は自由で、その上で見た人がいいシーンだったなあと思わせなければなりません。難しそうだ・・・
以下、課題3のネームの感想です。全部で28作品あります。
ネームの感想
形井中へい MP0の魔法使い
MP切れで魔法を使えなくなって追い詰められた主人公がゴブリンをコブラツイストで絞める話。4ページ目のコブラツイストが見せ場。
魔法使いがゴブリンに襲われていやらしいことをされるような展開が待っているのかと思ったらそんなことはなかった。変な期待をしてしまった自分の邪念を自覚させられました。
6ページと短いのでもう少し話を見たかった。魔法使いが魔法を使って敵を倒していくシーンがあると、より最後のツイストもぐっとくると思った。
明青りんご(あおりんご) 言え、わたし!
嶋田のことが好きで思いを伝えようとする村田(主人公)の話。10ページ目の村田が嶋田を励ますために手を握るところと、16ページ目のお互い頑張ろうの握手が接触シーン。
1回決めたことを素直に言えないところから好きなのに告白できないもどかしさが感じられてよかった。二人で一緒に頑張って合格してほしい。
接触シーンに関しては前半のほうが素直になれない自分が勇気を出して踏み出すところなので印象に残った。最後のコマはモノローグで終わっているが二人の関係が進展したことは握手ですでに伝わっているのでなくてもいいような気がする。
アキオ 衝突
自動車でおじいさんを轢いてしまった二人の話。最後7ページ目の恋人つなぎがクライマックスの接触シーン。
運転していた人は最初は逃げしようとしていたがおじいさんの人間性に触れて思い直すところが良かった。泣き顔は完成稿では表情での見せ場になりそう。
接触シーンは恋人つなぎになっていたがなぜそうなっているのかいまいちピンとこなかった(おそらく二人は恋人だろうとは思うが)。二人の関係性がわかりやすくなっているといいかもしれない。
赤い氷 人間
人間がスライムになってしまう世界で生きる主人公が道端のスライムを家で拷問する話。11ページ目の股裂きと15ページ目の接触シーンはなんかすごい。
主人公の目が飛び出ていて接触の前にグロテスクな姿に変形するのが印象に残った。
拷問シーンは割とデフォルメ化されているものの見る人は選ぶ作品かもしれない。完成稿でグロに振るのか抑えるのかは気になるところ。
阿山カンフー 粗忽病棟
病気で倒れた人と見舞いに来た人の話。クライマックスの接触は乳首を恥ずかしそうに触るところ。
二人のやり取りは終始軽快で楽しい会話が続く。しかしラストで急に死んでしまうので今までの展開との落差で悲しさが強調されて感じられたのがよかった。
最初のページで右にキャラ左に長めのセリフの同じ構図のコマが二つ続いて、最初からどっちがどっちかわからなくなって混乱した。
ばやしあきや 僕はカノジョに触れられない
相手に触れると心が読める能力を持つ少年アキと付き合っている少女すみれの話。12、13の見開きで手をつかんで腕を上げるところがクライマックス。
本当は両想いなのに素直になれず頑張るアキが面白かった。6ページ目の変顔とすみれの呆れ顔がいい。
読心能力は接触から考えた設定として面白いが、相手の気持ちを知るのが怖いから手をつなぐのが怖いというのは能力がなくても成立する話な気がする。手をつないだ時のすみれの心がわかるような描写(手をつないだ時の表情など)があるともっといいと思った。
深田えいひれ 選ばれしもの
剣を取りに来た勇者と巫女の話。最近流行のゼルダの伝説のような設定のギャグマンガ。
接触シーンは巫女と勇者が一緒に剣を抜くシーン。厳密には接触してないような気もするが巫女が勇者よりかなりデカくて面白かった。
大賢者の声が天の声として集中戦の吹き出しになっているが、3ページ目左下の巫女のセリフも同じ吹き出しになっていたのでわかりやすくするために変えたほうがいいと思った。
ぼんち。 シちゃった。
終電逃した女性主人公がイケメンの家に行く話。クライマックスの接触は二人のキスシーン。
セックスする・しないのお話の設定だけでなく、女性の内面のドキドキ感や妙にリアルなシチュエーションなどでエッチな感じの雰囲気を出せているがいいと思った。
キスシーンまでの盛り上がりはよかったが、あそこまでいってそのあと何もないのは本当にそうなるかな?という気もした。冒頭のシーンなどで二人の関係性や距離感がもっとわかりやすくなると結末にも説得力が増すと思う。
中山 墾 俺の性的問題と彼女の事情
主人公と10年ぶりにあった女性がセックスした結果、女性が謎の泡の中に閉じ込められる話。クライマックスは手を握って女性を助けるシーン。
8ページの手を握って助けるシーンが「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」のクライマックスで碇シンジが綾波レイを助けるところを思い出すようなシーンで個人的にすごく良かった。そのシーンにつなぐまでのところも、主人公が握った手を相手が握り返すようになっていてラストにつながる演出になっていると思った。
10年前に何かしこりになるような嫌なことがあったことはなんとなく理解はできたがはっきりとはわからなかった。泡が何かのトラウマのメタファーなのだとしたらもう少し過去のことを知りたい。
ひむか not princess but hero
人魚姫の物語にあこがれた人魚が海賊(=王子様の役回り)を助ける話。
主人公やほかの人魚たちがみんなかわいくてよかった。主人公はタコ足だけどけなげに頑張る姿が映えるいいやつだと思う。
クライマックスの接触シーンはアピール文によるとキス(9ページ)となっているが、6ページの海賊を助けるシーンのほうががっつり触れていて表情もよかったので個人的にはこちらのほうが印象に残った。
きぬばり 本草狂!久佐の煎じ薬
江戸時代の本草学者の女の子久佐の話。彼女が勉強するきっかけとなった幼馴染を助ける展開となり、薬を飲ませるためにキスするシーンがクライマックスシーン。
初めてのネーム提出ということで見れてよかった。本草学の知識もちゃんとしていて、かなり本格的な歴史ものを書く意欲があっていいと思う。
14ページのキスシーン手前の盛り上がりのページは細かいコマで久佐の感情が間を置かずに変わりすぎていると思った。
完成稿はまだ見れていないので、ペン入れされるとどうなるか楽しみ。
あい乙いなびこ お酢
お酢が苦手な靡とお酢を進める人の話。
酢を進めてくる謎の人物が強烈なキャラで印象に残った。
クライマックスの接触は肩に手を当てているシーンだとは思うが何が起こっているかよくわからなかった。全体の流れがわかりやすくなるとシーンの意味も分かるようになるかもしれない。
かわじろう ロボ
子守をしていたロボットが家から追い出されたところで修理屋に出会って変わる話。クライマックスは子供とロボットが手をつないで仲直りするシーン。
感情が理解できないロボットが寒さを不快に感じるようになることで人間らしくなるというアイデアが面白いと思った。寒がりになったことでクライマックスにもつながり、最後にくっつくようになるのもオチとしてほっこりした。
子供がロボのことを許す流れがやや唐突なような気もしたが、ロボットの話をメインとするとそこまで問題はないのかもしれない。8ページとしてはこれでいいとは思う。
https://school.genron.co.jp/works/manga/2023/students/jirooo/31677/
やながわけんじ 私立は友達じゃない
幼馴染のノブとミズキがばったり出会う話。
中学から別々の学校に通い微妙な距離感になった結果素直になれない二人の距離感がいい感じ。
クライマックスはミズキがノブのほっぺについたアイスを指でとってなめるシーン。接触はしていないので課題にはマッチしないかも。でも二人の表情もよく、回想シーンでの伏線や前のページでのタメもきいていてすごくいいシーンになっていると思う。
桐山 そこにAIはあるんか
AI絵師に打ちのめされた絵師の軟骨(主人公)と彼のファンの八丁堀が合う話。
落ち込んでる主人公を励ます八丁堀がよかった。嬉しそうにしたり泣いたりといろんな表情を見せてくれるのがいい。主人公よりキャラが立っていて魅力的だと思う。
接触は二人の握手とラストの馬乗りでラストのほうが特に印象に残った。オチで八丁堀が実は男だったということがわかるのだが11ページの回想で前にわかってしまう気がする。また。11ページは最初に読んだときはキャラデザが似てることもあってか主人公のことかと思って少し混乱した。
mangatime007(まんがタイム WITH うちやまつとむ) ご機嫌いかがですか 敬丘千鶴さま(2通目)
3人のキャラの日常劇。7ページのコントローラの奪い合いが接触。
キャラの設定は細かく決められていて3人それぞれにこだわりを感じた。
アピール文に書いてあったシナリオは理解できたが、マンガでは何が起こっているのかがわからなかった。キャラがどこにいるのか、だれとだれが一緒にしゃべっているのかなどの場面の状況がわかるようになると話が分かりやすくなると思う。
セリフもつぶれているところがあったのが気になった。
カネゴン 趣味
陽キャの松本と陰キャの佐々木が友達になる話。接触は8ページの友達になろうよの握手。
二人の趣味があっていたのに裏がある意外性のある展開が面白かった。絵柄と演出にもよっては面白く見せれそうな雰囲気を感じた。
初めての課題ネーム提出ということで見れてよかった!完成稿も楽しみ。
七井一汐(なないつ) 2人の孤独
触れると人が死んでしまうアザ症に感染した二人の話。人に触れられない二人が防護服越しに触れ合うところが見どころ。
アザ症が発症する原因が性的なトラウマと結びついているところや、ヘイトスピーチ的なおじさんが出てくるところから社会的な問題に対するメッセージ性を感じられた。
接触シーンは相手を殺そうとしたアザ症の男をとめるところ。最終的に止めて前向きな感じの話で終わるが男が殺そうとするくらい怒った割にすぐに収まるところやおじさんの引き際があっさり過ぎるところが気になった。
藍銅 ツバメ(らんどうつばめ)フルーツ王国のイチゴちゃん
果物人間が暮らすフルーツ王国に住む顔がリンゴのリンゴ太郎と妹のイチゴちゃんの話。二人のキスシーンが接触。
序盤の果物顔がたくさん出てくるおとぎの国感がよかった。課題1や課題2と違うタイプの女の子が出てきてこれはこれでかわいくていいと思う。
3ページ目の真ん中のコマが斜めに割られているのに右の絵が少しだけ隣のコマに出ているのが気になった。
くまのぶ 新しい春へのダンス
バレエで怪我したトラウマから踊れなかった菜綱が同じクラスの杓と一緒に踊れるようになる話。10~15ページで二人で手をつないで踊るところがクライマックス。
杓が明るくて楽しいキャラで菜綱を引っ張っていくのが良かった。葉のギザギザが特徴的でかわいい。
二人のダンスのいいシーンを見た後で最後に母親が出てくるのは違和感があった。話のメインは菜綱と杓だから二人の話にフォーカスしたほうがまとまりがいいと思う。
大須賀健 あのときの1000円を返せ
主人公のコタロウが昔取られた1000円の恨みを晴らす話。1000円を取られた相手のハルトを殴るシーンが接触。
コタロウの周りのやつが現在ではみんないいやつになっているのに、そんなことは関係なく昔の恨みを晴らすために殴りに行くコタロウが印象に残った。周りのドン引き感もまあそうなるよね感がある。
13ページ目の下のコマに出てくるコタロウの「何もできなかったお前が一番許せねぇ」のセリフは引っかかった。なにもできなかった自分を許せないという話だとしたら自分のことをお前と言っていることになり違和感がある。
藤原 ハル ふ・れる
ゾンビになる感染症が流行った世界でスーパーに取り残された恋人たちの話。
二人の恋人つなぎが朝焼けとともにクライマックスで出てくる。ちょっとずつ距離を詰めてクライマックスにもっていくところやゾンビたちも光で死んでいくところとかも上手い。
マスクを外した後の二人の表情と手つなぎのドキドキ感が魅力だと思うので完成稿の絵が入ったところに期待したい。
高月晃太 恋人つなぎって気持ちいいの?
コンビニで働くみやびとちいの二人が恋人つなぎについて議論する話。実際に二人で恋人つなぎするところが接触のクライマックス。
課題2に続いて百合っぽい感じの話でぐいぐい来るほう(みやび)が最後にデレる。展開の持っていくためにキャラの話でつなぐのが上手いと思った。かわいい女の子をちゃんと描けていていいと思う。
みやびは印象に残った一方でちいはイマイチ目立ってないように感じた。
東京ニトロ ハーツ。
周りの者を破壊する能力を持つユカワの話。
接触は倒れた電塔からユカワを助けるシーン。送電塔が破壊されて倒れる絵はネームの段階ですごい。
最後にタイトルと1枚絵で終わるのは映画っぽいと思いつつ、それまでの話が完結してないようにも感じた。
内容の話ではないが、このマンガに出てくるユカワの能力がイヤボーン(主人公が追い詰められた時に能力が発動する)と呼ばれることについての学びを得た。
たにかわつかさ 片岡さんのやらかいところ
まじめでガミガミしている片岡さんと幼馴染のやわら、片岡のことを知りたい佐々木の学園もの。接触は片岡さんのほっぺたを突っつくところ。
ツンツンしてる片岡さんが最後に顔を赤らめて怒るところはベタだけどかわいく、デフォルメされたキャラを描くのが上手いなあと思う。
最後8ページの「え?何が?」は誰のセリフでどういう意味なのかよくわからなかった。下2コマのセリフは情報量が多くて読んでて混乱したせいかもしれない。
ヤギワタル 戻る権利
10年間父親の介護をしていた主人公がタイムリープできることを知って父との思い出を振り返る話。
いい人だった父があっさり認知症になってしまうところは悲しい。接触は最後に父親に手を置くところで、シーンとしては地味な気がするが感動的な場面と話の作り方がいいと思った。
タイムリープしないことを選択するのは父との思い出を失わないためということになっているが、いい思い出の場面が15ページの一部くらいしかなくて、それまでずっと介護に苦労する話が出ているのが引っかかった。いい思い出をより魅力的に描けていると最後の決断にも説得力が出ると思う。
ねりけし エピソードゼロ
主人公が母親のお腹の中にいたころの話。元気に動いていたため男の子だと思ったら女だったというオチ。
接触はお腹の中にいた主人公と母親とおなかを触るおばあちゃんの3人になっていて、ひねりがきいていいアイデアだと思った。
4ページ目まで普通の人間が出てきて話が進んでいくのに最後のページで主人公と母親が説明もなく急に猫キャラになって出てくるのは違和感がある。この話だと人間に統一したほうがいいと思った。
ヤマオカ兄弟 いつもここにいるよ
おばあちゃんが好きだった少女の一生を描いた話。おばあちゃんの死から大人になり子供が生まれ死んでいくまでの人生が描かれている。
クライマックスの接触はおばあちゃんの手と触れるところ。手の大きさと絵柄の違いがやや気になるがいいシーンだと思った。
母親の髪は基本黒髪のぱっつんだが3ページ目では白髪で後ろで結っているように見えるなどキャラクターが同じ人物に見えないところがあるのが気になるところ。
感想は以上です。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
余談
課題3のネームについての感想配信もしていました。
こちらの配信では、課題3のネームをその場で読んで感想を言うというやり方でやってみたのですが、当初想定した以上に難しかったです。
師走の翁先生も講義の際に読んですぐに言うのは難しいということを仰ったときにこの配信のことを思いだし、事前準備って本当に大切なんだなあということを痛感させられました。
そんなこともありましたが、読んだ直後の素朴な感想みたいなものは言えたのかなと思っています。よければご覧ください。