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【第8期】さやわか先生&大井昌和先生による質疑応答のコーナーNo.3


ひらめき☆マンガ教室では受講生の学びを深めるために受講生専用の質問フォームを設けております。本コーナーでは「ひらめき☆マンガ+で公開可能」なものとしてフォームに投稿いただいた質問の一部を、皆さまにお届けいたします!

 

今回は《作品を1冊でも多く売るための方法》についての質問と回答をお伝えします。

 


質問者:匿名希望さん

<質問内容>

質問を失礼いたします。

 
自分の商業作品を、1冊でも多く売るための方法やコツがあれば教えていただきたいです…!現状、1巻や2巻の売り上げで継続の可否が決まってしまうことが多く、多分昔以上に短期決戦になってしまっていると思います。既存のファンが少ない漫画家ができる戦い方があれば、ぜひ教えていただきたいです。

 

どうかよろしくお願いいたします。

  

<さやわか先生からのご回答>

ご質問をありがとうございます!「1冊でも多く売るための方法やコツ」ということですね!!これがわかれば苦労はない!という感もありますが、しかし申し上げられることはいくつかありますので、ぜひ以下、よかったら参考にしていただければうれしいです。

 

まず、気になったのはご質問が、「紙の単行本」を売ることを念頭に置いているのかどうか、です。いまのマンガ業界というのは、昔とは違っていろいろなやり方で売り上げが立っている(単話売りで稼いでいる場合すら、今では普通ですよね)ので、その中でも、特に「紙の単行本」を意識しているということであれば、それ相応の効果的なやり方を考えないといけない、ということになります。ここで具体的に述べてもいいですが、ただ、今の時代にあまり沿っていないですし、今回は「既存のファンが少ない漫画家」の例ということですので、おそらくこちらのケースはあまり想定されていないのかなと思いました。

 

つまり、今回のご質問は、「電子の単行本」を売りたい、というお話かもしれないな、と思ったわけです。これはこれで、じゃあどうやれば(電子でも)単行本を買ってもらえるのか?ということになりますが、ただ、紙の単行本を買わせるよりは、購入のためのハードルは低めだと言えるでしょう。だからたとえば、第1話をまるごとSNSで公開して、「この続きは…」と言いつつAmazonのURLを貼る作家さんもいらっしゃいて、作品によっては(たとえば第1話の結末のヒキがすごく気になるものに作れている、とか)効果が高かったりします。

 

また、電子の場合は同様にSNSのクチコミ需要がうまく機能しがちです。ひとびとはSNSで、主に「心を揺さぶられる強い感情」や「周知させたほうがよさそうだと思える情報」について投稿・リポストをしたくなりがちなので、見た人が「この作品に出てくるキャラはマジかわいい」とか「この作品は多くの人が読む必要があるらしい」と思えるような投稿をすると、それが拡散されたりします。

 

ただ、上記したやり方は、そもそも作品が「そういうふうに作ってある」、つまり単行本が発売された時に、「SNSで拡散される投稿をしやすいように」作ってあることが条件だということはおわかりになると思います。もしかしたらご質問で念頭に置いているのは、そういうことじゃなくて、とにかく、発売後からでもできる、一冊でも売れる方法、みたいなことかもしれませんよね。

 

もちろん、そういう場合でも、先ほどの1話まるごと公開とか、作品のフックの強いところを見せていく、というのも有効です。つまり今から、この作品がどうやったらバズるか、みたいなことを考え、その要素をひねり出して、クチコミにつなげていくわけです。

 

が、それ以外の方法、つまり作品の内容とはあまり関係なく、とにかく一般論として売り上げを一冊でも増やすためにできることというのも、なくはありません。ただそれは、自主的にウェブサイン会をやるとか、Xのスペースで語るとか、クチコミを書いてくれた人にミニ色紙を配るとか、予算に余裕があるなら、フックのあるSNS広告を作って流す、みたいなやり方が多くなってきます。ただ、これらの方法は前述したように「作品そのものとあまり関係がない」話になってくるので、結果として作者自身が疲弊しやすいです。なので、個人的にはあまり強くオススメしないかなあ、というところです。

 

まとめますと、僕の個人的な考えとしては、まずはどういう形式(紙・電子など)で売ろうとしているかが重要で、さらには、それを踏まえて作品がどう作られているかが大事かなという感じになり、それ以上の一般論もあるけれど、それについてはあまりおすすめできることでもないだろうな、と思います。

 

そんな感じで、あまり参考にならなかったかもしれないのですが、冒頭に書きましたように、もしよろしければ何か考える際にでもお役立ていただければ幸いです。よろしくお願いいたします!

 

<大井先生からのご回答>

ご質問ありがとうございました!単行本を売りたい!とのことですが、自分も商業作家なので同じ気持ちでずっとやっておりますし、ずっと大ヒットのない漫画家人生です。

 

そんな自分がお答えするのは大変恐縮なのですが、まず昨今電子書籍の隆盛で以前より短期決戦を強いられてるのでは?と言う点ですが、これは実は昔よりは長い目で判断されてると思います。とはいえ1巻打ち切りが3巻くらいまで見てもらえるくらいの差ですが。これは紙の本だけのときは一巻の消化率だけで判断されていた(詳しくいえば配本率の段階で)ものが、今は電子の3巻まで出たときのセールの結果まで判断保留できる、と言う感じです。とはいえ電子一巻が圧倒的にダメでしたら同じですが…。

 

ではなぜ今の方が厳しく思えるかと言うと、電子が主戦場になった結果データが圧倒的に精細に取れるようになったので、打ち切り判断基準もクリアになったことがあると思います。加えて作家さん本人によるsnsなどの宣伝活動も要求される結果、より厳しく感じると思います(これが得意な作家さんも多いですが)

 

と言うわけで一冊でも多く売るには、と言うのは電子においては広告マーケティングが最も効果的ですし、編集部によっては連載開始の段階でその予算も組んだりしてると思います。また前述したようにsnsが得意な作家さんは自分で強力な宣伝も打てると思いますし、その活動自体が注目も浴びるので売り上げに繋がることもあると思います。また前提として、今の社会やマーケットに届く企画やキャラ、タイトルデザインであることは大事だと思います。

 

マーケットが大きくなった結果、作家ができることは面白い漫画を描くしかないのですが、これも電子が主戦場になった結果面白いものは届きやすくなったと感じています。本屋に置かれない、棚が取れないと言う理不尽がなくなった結果だと思います。また、こう言う悩みを編集さんと気軽にできる環境を作ることも大事だと思います。これは連載の続け方や作戦などを立てる上でも最大の味方ですので。

 

長々と言いましたが要約すると

 

・面白い漫画を描く
・snsなどの活動をやれる範囲で頑張る(自分も苦手ですが頑張っていこうと最近思ってます)
・編集さんとの意思疎通をしっかりする

 

これらを自分も念頭に頑張ってまいりたいと思ってますし、逆に作家を続けていく上で気づくことも増えていくと思います。筆を止めるほどまでは悩まず、しかし考えることはやめずに頑張って行っていただけると嬉しいです。


 

以上です!

 

本コーナーは不定期配信です。

更新があった際にはSNSなどでも通知いたしますのでぜひお読みください🌴

おわり

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