
読んだよ/これから読むよ
制作生のみなさん、最終課題提出お疲れ様でした。以下、課題やりつつ読んでた本の感想です。
読んだよ①四方田犬彦『漫画原論』(ちくま学芸文庫版、1999)

本書については、既にとらじろうさんが丁寧な感想を書いてくださっているので(https://hirameki.genron.co.jp/blog/2024/07/26/26252/)、まともな感想の読みたい方はそちらへ。
私には特に第18章「登場人物のコード」が興味深かった。「二度と同じ顔が描かれることはない/同一の顔を際限なく描き続けることができる」という二つの法則を解説した章。この章だけではないが、自分が手癖で何も考えずに描いている所での、本来踏まえているべきやり方が見えてくる。カラー漫画を論じた第21章「色彩の諸相」も面白い。他方、本書の初版刊行から30年以上経っているので、その間にどんな変化があったのかは見てみないといけない。
読んだよ②内田善美『星の時計のLiddell』1~3巻(集英社、1985~86)

SF創作講座との合同授業で大森望先生が紹介していたので。長らく絶版であり、プレミア価格で手に入れたので頑張って読み通したが、しんどかった…特に葉月のサークルの、精神世界かガイア思想かイルカとの対話か何か?に影響されたと思しき蘊蓄が。私自身が80年代の少女漫画のノリに慣れていないせいもあるだろう。
今の私にはピンと来なかったが、この作品が手軽に読めずただ神秘化される現状は良くないとは思った。そもそも読めなければ、面白いもつまらないも言えない。復刊できない事情があるようだが、なぜか仏伊訳が既に存在し、英訳(日本では手に入らないらしい)も出るとか何とか。語学をやれということなのか…。
読んだよ③山形浩生『翻訳者の全技術』(星海社新書、2025)

漫画への直接の言及はごくわずか、書名と違い内容の半分は読書法・勉強法なのだが、漫画を描く上でも使える方法が紹介されている気がする。例えば訳語の選定、原書と違う環境で読まれる翻訳文をどこまで説明的に補うか、などはどんな人を読者と想定するかであり、やはり読者を想定しないと何事も始まらないということなのだ。後、下手に抽象的に漠然と考えるんじゃなくて、まずは手を動かせ、現場を見ろとか。
途中、橋本治への言及あり。山形は『花咲く乙女たちのキンピラゴボウ』を橋本絶頂期の作品として高く評価する(それ以降は評価していない)。私は『花咲く~ 』を下巻だけ売ってた古本屋で手に入れたのだが、文体が取っつきづらく、まだ読み始めなのであった。
読むよ 相馬御風編注『良寛和尚歌集』/若松英輔編『八木重吉詩集』(ともに岩波文庫、2025)

また漫画じゃなくて申し訳ない…。先月今月と立て続けに出たこれら二冊には、恐らく全人類の中で私だけが気にしている共通点がある…編者の相馬御風と若松英輔がともに新潟県糸魚川市出身であるという…。私の出身地でもある。ちなみに相馬御風は早稲田大学校歌「都の西北」の作詞者であり、この『良寛和尚歌集』にも「都の西北と私」という小文が掲載されているので、早稲田関係者は注目されたし。
相馬御風については、次のブログ記事も参照していただけると幸い。https://hirameki.genron.co.jp/blog/2024/11/22/30577/
新潟県糸魚川市については、当地出身の晴川シンタ『百瀬アキラの初恋破綻中。』(サンデー連載中)で、少しどんなところか雰囲気が掴める。 https://www.sunday-webry.com/episode/2550689798900303636