
【第9期】さやわか先生&大井昌和先生による質疑応答のコーナーNo.2
ひらめき☆マンガ教室では受講生の学びを深めるために受講生専用の質問フォームを設けております。本コーナーでは「ひらめき☆マンガ+で公開可能」なものとしてフォームに投稿いただいた質問の一部をみなさまにお届けします!
今回は《現在の漫画の動向》についての質問と回答です。
※さやわか先生宛の質問だったため、大井先生からの回答はありません。
質問者:ねーこさん
<質問内容>
初めまして。
ねーこと申します。1年間よろしくお願いいたします。
これから1年間、漫画について学ぶにあたり、現在の漫画の動向について知っておきたいなと思っております。つきましては、漫画業界全体が俯瞰して見れるようなおすすめの漫画アプリなどはございますでしょうか?ストアの説明だけではどうしても不十分で困っております。お教えいただけると幸いです。
<さやわか先生からのご回答>
ねーこさん、ご質問をありがとうございます!
「漫画業界全体が俯瞰して見れるようなおすすめの漫画アプリ」をとのことですね。積極的にご自身のかかわる界隈について知ろうとする姿勢、とてもいいと思います!ぜひ!そのお気持ちで、いろいろご自身で作品を読まれてみてください!
しかし、あくまでご質問へのお答えとして申し上げるならば、漫画業界の「全体」を俯瞰できるようなアプリは、存在しない、というふうになってしまいます。ご期待にそえず、申し訳ありません。
簡単に理由をご説明しますと、要するに「漫画業界は非常に広く、アプリひとつで概観するのはかなり難しい」ということになります。漫画は読者層も、作品の種類も多様で、どこを切り取っても「これが漫画の中心だ」とは言い難いのです。たとえば「ジャンプ」はとても人気がありますし、アニメ化作品も多いですが、アプリのダウンロード数で見ると、「LINEマンガ」や「ピッコマ」のほうが多いです。さらに他方で、「この漫画を読め!」みたいな年間ベストには、上記したような媒体に載っている作品はあまり入ってきません。さらに、XやinstagramなどSNSだけで読まれ続けている漫画もあります。
たとえば、ちょうど先日、とある方がnoteで、ウェブで読むことのできる(商用)マンガサイトの一覧を公開していました。ご自身が毎日読んでいるもののリストだそうです。以下のURLです。
https://note.com/kosianmodoki/n/ndf5f831c32c4
このリストも、すごく有用なものだと思います。だからねーこさんへのお答えとして、これらのリストをぱらぱらっと読んでみるのもいいと思いますよと、おすすめします。しかし同時に、これを全て読め!という意味ではないですよ、と付け加えさせていただきます。
というのも、僕自身、このリストを読んでひえーーーーと思ったからです。めちゃめちゃ多いですよね。かように、漫画の世界は大きいわけです。とてもじゃないけど、その中のひとつだけを読むことで、漫画業界の全体を把握する、みたいなことはできそうにありません。そして、マンガ読者がみんな、これらすべてを読んでいるとは思えません。
しかし、それでも、多くの人が「漫画業界」という言い方で、漠然と「業界の全体」みたいなものを想定して「今はあの作品がおもしろい」「この媒体がナンバーワンだ」とか、よく語っていますよね。だから、ねーこさんも、「いま漫画業界で面白いとか、人気があるとか、特定の傾向がぱっとわかるサイトがあるに違いない」と思ったわけです。
90年代までは、たしかにそういう、全体を俯瞰するようなことは可能だったと思います。しかし、今の実態としては、誰もが、めいめいバラバラに「全体が見えてる〜」と考えながら、自分の想定範囲内にない作品のことは、知りもしないし、興味もない、という形になっていると言ってもいいでしょう。さっきのURLの人はあのリストの一覧を全部読んでいるとのことですが、あれだけの量があるのでは、読んだとて、「全体の」傾向を図るのはちょっと難しいように思います。もちろん、何がしかの傾向はあらわれるかもしれませんが、「全体」を意識すればするほど、あいまいな、玉虫色の意見を言わざるをえないのではないでしょうか。
僕は、そういう奇妙な状況になっているのは、そもそも人々が漫画のことを「ジャンル」だと思っているせいじゃないかな、と思っています。つまり漫画は「映画」とか「演劇」「小説」などと同じような「カルチャーの1カテゴリー」だと思われているわけです。しかし、僕はそれが間違いとまでは言わないまでも、誤解も生まれる原因なんじゃないかな、と思っているわけです。
どういうことか?以下のように考えると、わかりやすいと思います。たしかに漫画という言葉は、ジャンル名を表す言葉として使われます。しかしそれだけでなく、本当は「文章」とか「映像」などと同様の、「表現形式」を表す言葉でもある。
ひらめき☆マンガ教室では、1回目の講義から「ここではまず、マンガの文法を教えます」という言い方をしました。この言い方はまさに、マンガを「文章」とか「映像」と同じく、「いろんな使い方のできる表現形式」として扱おう、という意味です。あるていどの使い方ができるようになると、じゃあ子供向けの作品を描こうとか、大人向けの作品を描きたいとか、女性向けがいいとか、エッセイがいいとか、アニメ映画化されるような超絶エンタメがやりたいとか、数人しか読まなくていいから抽象度の高い実験的なことがやりたいとか、その表現形式を使って「どんな作品を作るか」という話に移っていけますよね。
漫画を「ジャンル」として捉えると、そういう考え方にならないので「ジャンプが頂点」と言いながら、読者層によってはLINEのほうが読まれてるみたいな、不自然なことになってきます。だから僕は、上記したように、漫画を「表現形式」として扱いつつ、自分がまずはそれを使えるようになり、自分が何を表現したいかに合わせて、さっきのリストからぱらぱらっと自分の好みや方針ややれることを探っていくのがいいと、僕は思います。
お答えとしてはそういう感じになるのですが、いかがでしょうか。あまりご期待どおりの内容ではないかもしれませんが、よかったら、何かの役に立てていただければ幸いです。
以上です!
本コーナーは不定期配信です。
更新があった際にはSNSなどでも通知いたしますのでぜひお読みください🌴
おわり
