
私の好きな一冊『捨て悪役令嬢は怪物にお伽噺を語る』
4巻19話
「私だけが知っているから言いたくなる こうしてそのかけらを語り聞かせたくなる」
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この漫画は悪役令嬢モノのメタ作品です。だから悪役令嬢モノがどういうものかを知らないと、序盤で躓いてしまうかもしれません。
でも私はこの漫画をオススメします。この漫画は、物語るとはどういうことなのかを考えさせてくれました。
これを読む人が、スムーズに『捨て悪役令嬢は怪物にお伽噺を語る』を読み始められるよう、ここで前提とされる知識、知っておいた方がよりスムーズに読み進められる知識を、解説したいと思います。
そんなの退屈だ!という方は、私を信じて全巻まとめ買いしてください。
1話無料などで読んでみてからでも良いです。
私にとっての『捨て悪役令嬢』の魅力は4巻にあります。悪役令嬢シルフ・ビーベルとカンナ・コピエーネが対峙するシーンこそが、この漫画のクライマックスです。
悪役令嬢モノでは滅多に描かれない、転生者の孤独と郷愁を、この漫画はしずかに強く描いています。そこが一番の魅力です。
全6巻ですが、物語は4巻で一応の終わりを迎えます。ただ、5巻の終わりまで読むことで、救われるキャラクターもいます。
6巻は完全に後日談的な話が続きますので、5巻まで読んでこの漫画が気に入ったら読む、でも良いと思います。
5冊以上まとめて購入でコインが返ってくるサイトで買うなら、もちろんまとめ買いがおすすめです。
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・悪役令嬢とは何か
悪役令嬢とは、乙女ゲームにおいて主人公の恋路を邪魔するために登場するとされる、悪役の令嬢である。
・乙女ゲームとは何か
主に女性をターゲットとした、イケメンたちと仮想恋愛に興じることのできる恋愛アドベンチャーゲームのことである。
・乙女ゲームの主人公キャラクターとはどんなか
乙女ゲームの主人公キャラクターには共通する雰囲気がある。あまり濃いキャラクターでは同性からの支持を得られない。しかしあまり内向的すぎては、物語を動かせない。イケメンたちが主人公に惚れる必要があるため、魅力はなければならない。
必然的に、ある型にハマった主人公像が、界隈ではやんわりと共有されている。
具体的に言えば、癒し系で芯の強い女性、としておく。
また、乙女ゲームの主人公は、貴族ではなく平民である。
・乙女ゲームの主人公の外見的特徴はあるか
平民出身という設定が反映されるからか、髪は長くても肩まで。同級生の貴族令嬢たちのほうは、長髪や、セットに手間がかかりそうな髪型であることが多い。
無論貴族令嬢にも長髪でない者もいるが、モブキャラ(名前のつかないキャラクター)であることが多い。
・なぜ乙女ゲームの主人公は平民なのか
物語は、主人公に特殊な能力が認められ、貴族たちの通う魔法学院に入学するところから始まるとされる。それまで暮らしていた家族(あるいは孤児院)の元を離れ、新たな環境での生活が始まる。ノベルゲーム全般で好まれる展開で、平民視点から貴族との違いを描くことで、世界観説明を自然に行うことができる。
・なぜ特定の令嬢が悪役になるのか
乙女ゲームには「平民出身の主人公が特殊な能力(魔法)に目覚め、平民ながらにして、貴族達の通う魔法学院に通うことになる」というテンプレート(王道)がある。
「貴族によって魔法が占有されている」「魔法の才能は遺伝的に継承されるもので、才能のある人間は国に保護される」「平民にも魔法の才能が認められる場合があるが、学院では差別される存在」だったりと、様々な設定がある。
とにかく重要なのは、
主人公が特殊な能力に目覚めるor先天的に特殊な能力を持つ
→ 貴族たちの集う学院に通うことになる
→ 平民なので貴族達から差別される
の流れだ。
そして、この主人公を差別し、嫌がらせ行為をしてくる貴族の群れのリーダー格の存在こそが、悪役令嬢である。
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・なぜ悪役令嬢は乙女ゲームの主人公に嫌がらせをするのか
身分差別と、恋のライバル意識からである。
身分差別は、前述の通り貴族しか学ぶことのできない学院に特例で入学してくる主人公の身分に対する差別である。なお、主人公以外にも学院に平民が入学している場合、主人公は広範な差別対象のうちのひとりに過ぎない。しかし、転生者かつ高い能力(主人公補正)を持つ主人公に対しては特に厳しく当たるようになる。
また、悪役令嬢が乙女ゲームの攻略対象であるイケメンと婚約している場合がある。この場合は、婚約者と親しくなっていく主人公が許せないという、至極もっともな理由である。
悪役令嬢モノでは転生者が生前(転生前)乙女ゲームをプレイ中に主人公の行動にツッコミを入れることもある。身分を超えた恋愛というロマンティシズムの中でおざなりにされた人間の倫理に対する、常識的反応である。
・悪役令嬢はどうなるか
主人公に対して行った悪事が周囲にバレ、断罪される。主人公は想い人と結ばれるが、悪役令嬢は貴族の地位を失ったり追放されたり処刑されたりして物語から退場する。
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以上が悪役令嬢の基礎知識となる。これを前提としたメタ作品として悪役令嬢モノが作られる。
※ここまでで大体理解できた方は、ここで読むのを終え、悪役令嬢モノを読み始めても良い。悪役令嬢モノは導入部分が駆け足だが、読者を置いてけぼりにはしないように最低限解説される。原作ゲームの存在や、その作品の悪役令嬢がどれほど残虐非道か、どういう顛末を辿るのか、すべてが1~2pで説明される。むしろその圧縮された解説の手腕は参考になるかもしれない。何かを説明するとき、何を文字にし何を絵にするのか、言葉はどう選択するかなど、漫画表現を総動員して過不足なく説明するページは、作家によっては非常に高度なテクニックを使って鮮やかにやり遂げるため、見事と言うほかない。そしてそれは無料1話の中でほぼ確実に読めるのだ。今すぐ読みに行くべきである。最低でも10種の悪役令嬢モノにチャレンジしてみてほしい。きっと続きが読みたくなる作品に出会えるはず。
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・悪役令嬢モノとは何か 類型1
悪役令嬢を主人公とする物語群のことである。多くに適用できるテンプレートは次のようなものである。
「転生したら乙女ゲームの世界だった。しかも自分は悪役令嬢キャラクターで、このままメインストーリーが進んでしまうと断罪・追放・処刑されてしまう。それをなんとか回避するために( A )」
( A )に入るものが、主人公のキャラ付けや、物語の方向性を決める。
・悪役令嬢モノとは何か 類型2
また、このテンプレートをなぞりつつも、悪役令嬢がメインストーリーを無視して我が道を往くのもまた、新たなテンプレートとして定着している。つまり、
「転生したら乙女ゲームの世界で、自分は悪役令嬢だった。でも、せっかく乙女ゲームの世界に転生したので、メインストーリーに縛られずに( B )」
( B )に入るものが、主人公のキャラ付けや、物語の方向性を決める。
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・類似の転生テンプレートとしての”聖女追放モノ”
乙女ゲームの世界に転生する作品の中で、悪役令嬢と双璧を成すジャンルがある。それが聖女追放モノだ。乙女ゲームの世界の主人公には「聖なる力を持つ」という設定が採用されることがある。それを「聖女」と呼ぶ。魔法の才能ではなく、聖なる力の才能=聖女であるという理由で、貴族たちの通う学院に通うことが許される。
・聖女の持つ聖なる力とは何か
この聖なる力は、先天的な能力であり、世界を救う力である。聖女の資格は、努力によって得られるものではない。
・聖女追放モノと悪役令嬢モノの世界観は似ているか
似ている。
ともに乙女ゲームの世界に転生する点や、転生先のキャラクターには婚約者がいる点、魔法などが存在するファンタジー色の強い世界観である点など、共通要素が多い。
・なぜ聖女は世界を救済するのか
世界が脅かされるからである
・聖女追放モノの世界は何に脅かされるのか
魔物や、それを率いる魔王などの、人間に害する存在である。
魔物に関しては、人間側が既に討伐の知識を有していることが多く、一定の均衡が保たれている。
その均衡が破られることをきっかけに、聖女が出現する。魔物の大量発生や、魔王の復活など、様々である。
・聖女はどのように世界を救済するのか
聖女は、聖なる力の行使によって世界を救済する。
・聖なる力とはどのようなものがあるか
魔物を寄せ付けない結界の生成・維持・管理、魔物の戦う者たちへの支援、制作物への無意識の聖なる力の付与、などである。
・聖女は聖なる力を把握しているのか
自覚的な場合と、無自覚な場合とある。
自覚的な場合、その高い能力を妬んだ婚約者から婚約破棄されるケースが非常に多い。
無自覚な場合、聖女は作品ごとに様々な方法で聖なる力を世界にばらまき、結果として世界を救済に導く。聖なる力を発揮する対象がそのままタイトルに入ることもある。
・主人公が聖女の乙女ゲームの王道テンプレートはどんなか
主人公が聖女という設定の物語は、魔王の復活が予言されている世界が多い。そして、その魔王に対抗できるのは聖女の力だけである。あるいは「聖女の加護を受けた者にしか魔王が倒せない」のように、世界が聖女を必要とする設定のものもある。
・世界を救済した後、聖女はどうなるのか
劇中で、かつての勇者の伝説・しきたりとして「勇者と聖女の二人が結ばれる」と語られることもある。聖女が転生者であり、歓迎される場合、この例にならうことが多い。
・聖女はひとりで世界を救うのか
聖女は、選ばれたイケメンたちと共に魔王や魔物と戦う。
聖女を守る役割として騎士がつけられることが多い。学院では、聖女に対して親切にする貴族もいる。普段から複数人の女性を周囲に侍らせている優男もいる。乙女ゲームなので、これらの男性はすべてイケメンで、攻略対象である。
ただ、その世界で一番の王道、メインシナリオでの攻略対象は王子・王太子である。
・聖女はなぜ王子と結ばれるのか
前述の通り、「聖女はその聖なる力で民を救い、王子と共に魔王を倒して世界を救済し、その後二人は結ばれる」という物語がメインストーリーのテンプレートとして存在する。
だが、乙女ゲームならば、聖女が王子以外と結ばれてもよいはずである。あくまで、乙女ゲームのメインシナリオでは、王子と結ばれるということだ。
なお、悪役令嬢が主役であるときは、ほぼ例外なく平民=聖女=乙女ゲームの主人公サイドは、王子と結ばれる方向で進展していく。もちろん、これをメタに取る物語も可能であり、既に実在する。
・王子はなぜ聖女と結ばれるのか
王子には、すでに婚約者がいる場合がある。王子は主人公=聖女と恋に落ちると、貴族のご令嬢との婚約を蹴って、平民の聖女を選ぶ。政略結婚で決められた相手ではなく、心を通わせ真実の愛に気づかせてくれたヒロイン=聖女と結ばれるという物語が、聖女モノの王道である。
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・身分を超えた恋愛という王道
ここで「平民との身分を超えた恋愛」がメタレベルで活用されている点に注意しておこう。
乙女ゲームのストーリーでは、主人公と攻略対象の誰が結ばれようと、基本的にそれは「平民との身分を超えた恋愛」となる。
・乙女ゲームの主人公はイケメンたちとどう結ばれるのか
イケメンたちの抱える内面の問題を乙女ゲームの主人公が解決することで絆を深め、結ばれる。キャラクターごとに掘り下げるシナリオが用意されており、これらは個別シナリオと呼ばれる。
・個別シナリオとは何か
多くの恋愛アドベンチャーゲームでは、まず共通のシナリオ部分が存在する。その共通シナリオが進んでいるあいだに、攻略対象の好感度を一定値まで上げる・特定のイベントを発生させるなどの条件を満たすと、その攻略対象と恋愛関係へ発展するシナリオへと分岐する。
この、特定の攻略対象との恋愛を楽しむシナリオ部分を、個別シナリオと言う。これは共通シナリオに対応する言い方である。
・フラグ、ルート、
ゲーム内でシナリオを管理する際、「好感度が◯◯以上になった」「イベントAを発生させた」などのプレイヤーの行動を記憶する方法として、フラグ管理というものがある。詳細は省くが、
ある条件を満たす=フラグが立つ
という表現を取る。
『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…』
このタイトルから、どのような物語か分かるようになっているだろうか。
また、◯◯(キャラ名)ルートという言い方がされることもある。これは、乙女ゲームにおいて、個別シナリオを、その攻略対象のキャラ名を使って区分して言う言い方だ。
乙女ゲームのプレイヤーたちは、共通ルートでフラグを立てて、目当てのイケメン攻略対象の個別ルートへ進むことを目指す。
『悪役令嬢は溺愛ルートに入りました…!?』
『悪役令嬢ルートから解放されました! 〜ゲームは終わったので、ヒロインには退場してもらいましょうか〜』
このようなタイトルの作品内容を、おおよそ予想できるようになっていれば幸いである。
・悪役令嬢による先取り
イケメン攻略対象たちの抱える問題を、悪役令嬢が乙女ゲームの主人公に先回りして解決してしまうことがある。おそらく一番有名な作品であろう『はめフラ』は、まさにこれである。
悪役令嬢は、幼少期から攻略対象らと交流がある。そして、メインストーリーでの悪役令嬢とは違う行動選択をとる。それはイケメン攻略対象たちが、将来、聖女たちと共に自分を断罪するのを防ぐ為である。
これによって、シナリオは大きく変容する。その変容は悪役令嬢自身の意図しない方向へ向かうこともある。悪役令嬢モノは、そのズレを楽しむ物語でもある。
悪役令嬢モノは、その多くが誤配の物語である。
・聖女はなぜ追放されそうになるのか
聖女モノのテンプレートの世界において、聖女には追放の危機が訪れることが多い。平民の主人公=聖女に自分の婚約者を奪われまいと、王子の婚約者のご令嬢が、黙っていないためである。
・王子の婚約者の令嬢は何をして、最後にどうなるのか
婚約者の令嬢は、主人公=聖女に対して悪質な嫌がらせをする。そして、聖女を学院からいられなくするために、聖女を陥れて追放に追い込もうとする。偽りの証言などにより、主人公は悪であり聖女に相応しくない事実をでっち上げて、王子の恋人の座から蹴落とそうとする。
しかし、聖女の味方は学院に多く存在し、その多くはイケメンで攻略対象である。イケメンの攻略対象たちによって悪しき企みはバレてしまい、婚約者の令嬢は断罪される。そして王子は真に愛する主人公=聖女と結ばれる。これが、乙女ゲームの主人公が聖女の場合の、王道シナリオである。
なお、ここで出てくる「聖女を追放しようと画策する、王子の婚約者の令嬢」こそが、悪役令嬢である。
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・聖女追放モノとは 類型1
「転生したら、乙女ゲームの主人公で、聖女だった。しかし、私は聖女になんてなりたくない。だから( C )」
この( C )に入るものが、主人公のキャラ付けや、物語の方向性を決める。
・聖女追放モノとは 類型2
聖女追放モノにはもうひとつの王道テンプレートがある。
「聖女である私は、悪役令嬢に陥れられて居場所αを追放されてしまった。しかし、聖女がいなくなったことで居場所αは衰退していく。一方で、居場所αを追放された私は新たな居場所βを得て、( D )」
この( C )に入るものが、主人公のキャラ付けや、物語の方向性を決める。
ここで重要なのは居場所を追放されるという点である。聖女の役割を続けたいという意思あるが、それを妨害される形である。また、自分が聖女(高い能力)であることに無自覚なまま、聖女の役割を果たしていた、という場合もある。この場合は聖女が追放されることで、もとの居場所αは苦難に見舞われる。俗にいう「ざまぁ系」の描写が入ることもある。
・聖女追放モノの全体的な特徴はあるか
類型1と類型2に共通する特徴として、( C )や( D )に入る内容は、主に女性の自己実現や欲望に基づくものが選ばれる傾向がある。前世での未練を果たすタイプと、偶然得た特殊な能力を活かしてできる活動に邁進するタイプとがある。
聖女追放モノは主人公がポジティブで、新しい土地で新しい事業を始めたりすることも多い。様々なタイプの自活する女性像が提供されている。全体的に見て、溺愛モノとは女性が目指す方向性がやや異なる。
・聖女に普通の生活ができるのか
無理である。どんなふうに暮らしていても、聖女のすごい力が生活の至る所で発揮されてしまって、大体の聖女は、聖女という役割から逃れられず、聖女からの計画的追放(逃走)に失敗する。
・才能の無駄遣い
聖女追放モノは、才能を無駄遣いすることも多い。類まれなる魔法・聖なる力の才能を、日常の些細なことに使ったり、ただ自分の嗜好するものを求めて使ったりする。
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・悪役令嬢モノと聖女追放モノの違い
悪役令嬢モノは、自身が断罪・追放・処刑されるという運命を回避するため、王道シナリオの改変を幼い頃から目指す。メインストーリーが始まる前からその改変を始めるため、幼いころから悪役令嬢の物語が始まることが多い。
聖女追放モノは、王道シナリオに沿って話を進め、悪役令嬢断罪シーンで悪役令嬢にあえて敗北し、追放されてから始まる。ほとんどの物語が、追放後の物語である。
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・悪役令嬢はいつ乙女ゲームの主人公と出会うのか
悪役令嬢を断罪する原因となる、乙女ゲームの主人公とは、学院で初めて出会う作品がほとんどだ。転生者である悪役令嬢は、自分を破滅に導く乙女ゲームの主人公を警戒したり、敵対したりする。
学院に入る前に出会うケースもあるが、ほとんど見られない。
悪役令嬢側が一方的に聖女=主人公の存在を予知・予期している場合でも、主人公は平民であり、悪役令嬢の立場からは接触が難しい。それよりも、乙女ゲームにおいて攻略対象であるイケメンたちを、幼少期から手懐けようとするケースが多い。
この場合、悪役令嬢は自分に向けられる好意に対して鈍感である事が多い。
・悪役令嬢モノと聖女追放モノの違いを簡潔に
悪役令嬢モノはメインストーリーの中でもがいてシナリオの改変を目指す。
聖女追放モノは聖女が追放されたのち、新しい生活を始めるところから物語が始まる。
乙女ゲームのメインストーリーが始まる前からの物語だと悪役令嬢モノ、終わった後の物語なら聖女追放モノ、と整理できれば良かったのだが、聖女追放モノには乙女ゲームの世界観が前提とされていないものもある(後述)。
・悪役令嬢モノのバリエーション
悪役令嬢が転生者でない場合もある。この場合、悪役令嬢が何かをきっかけに改心し、傲慢で権威を笠に着た態度を改め、まっとうな人間に成長していく。
悪役令嬢改心モノの王道は、乙女ゲームのメインシナリオの夢を見て、このままだと自分が断罪されてしまうことを知るというものである。あるいは、メインシナリオが十分進行し、悪役令嬢が断罪され、処刑されて死亡した瞬間、何か不思議なことが起こって時間が巻き戻り、悪役令嬢は幼い自分から生き直す、というパターンもある。
・悪役令嬢改心モノにおける聖女
悪役令嬢改心モノでは、乙女ゲームのメインシナリオが開始されると、平民出身の聖女=乙女ゲームの主人公が登場する。
そして聖女には前世の知識がある場合が多い。聖女はメインシナリオを知っているが、悪役令嬢は改心してしまっていて悪役として成立していない。だが、聖女は、メインシナリオ通りに悪役令嬢を断罪しなければ、メインシナリオが完遂されない。
王子の婚約者の断罪して追放しなければ、乙女ゲームの主人公である聖女は、王子と結婚できない。この場合、乙女ゲームの主人公にとってシナリオ通りに動かない悪役令嬢は困った存在である。
・聖女追放モノのバリエーション
そもそも聖女追放モノには乙女ゲームのメインシナリオが存在しないものも多い。共通要素はいくつかあるが、聖女追放モノ=乙女ゲームの世界観ではないことには注意しておきたい。
・聖女は過労に見舞われる
様々な事情から、聖女は過労に見舞われていることが多い。その過酷な環境から離れるところから始まる物語が非常に多い。
・聖女はどう追放されるのか
多くが、聖女自身に過失なく、他のものの悪意によって追放される。無能だと決めつけられる、成果を横取りされる、
・聖女追放モノにも現れる乙女ゲームの主人公的な女キャラ
愛のない表現になってしまうが、聖女の婚約者(大抵は王子)が、上述の「平民との身分を超えた恋愛」を求めてぽっと出の女に引っかかり、聖女を無能と断言し婚約を破棄し、追放する場合がある。
この際にも、「平民との身分を超えた恋愛」がメタとして活用されている。
・聖女が追放されるとどうなるか
聖女に比べると、バカ王子の愛した平民は力が足りず、聖女によって保たれていた秩序が乱れるなど問題が起こる。王子は失脚したり、聖女を取り戻そうと躍起になったりする。
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・聖女追放が示す “追放モノ” 類型の存在
実は聖女追放モノは、悪役令嬢モノと違い、別ジャンルからの影響も強く受けている。それはパーティー追放モノである。
・パーティーとは何か
パーティーとは、冒険者たちが集まって行動する際の単位である。
もとは、複数のキャラクターからメンバーを選出して戦わせるゲームにおいて、その編成単位を「パーティー」と呼んだことに由来する。FFやドラクエで常用されるため、ゲームをプレイする人々のあいだでは一般的用語として定着している。
・冒険者とは何か
魔法ファンタジーの世界において、国や騎士団に属さずに、己たちの力だけで世界の脅威と対決し、また世界を冒険する者たちを言う。
冒険者の仕事は、報酬を目当てに魔物を討伐する、薬草など特定素材を採集する、ダンジョンと呼ばれる魔物の這いずり回る特殊な空間の探検・調査する、などである。
・パーティー追放モノとはなにか
「本当は有能なのにパーティーから追放されてしまったが、( E )」
パーティー追放モノはほとんどがこの類型である。聖女追放モノと似通っており、婚約者(追放で失う未来)や王宮(追放で失う居場所)などの要素が比較的自由に設定できるため、男性にも人気は高い。
追放後に新しくパーティーを組む際、美少女を集めていってハーレムパーティーを結成するのが、男性向けで一番人気である。
・パーティー追放モノの主人公は追放後どうなるか
主人公が、自分が実は強いということを隠したり、ひけらかさずにひっそり暮らそうとするものが多い。
ただ、結局は別のパーティー内で頭角を現したり、隠居生活の中でその片鱗をチラつかせたり、「俺また何かやっちゃいました?」と揶揄されるように無自覚に自分の高い能力を見せつけていくことになる。
・主人公の有能さはどう表現されるか
主人公の有能さは、人助けなどで能力を発揮することで周囲の人間に示される。能力の高さに比例せず、自己認識では自分は大したことのない能力だと思い込んでいる場合も多い。
例えば、あまりに能力が高すぎるため、主人公の強さを正確に測れる人間にも見抜くだけの高い能力を要する場合がある。この場合は、見抜いた人間は主人公の仲間になり、主人公の活動を支援する・見守るなどの役割になる。
また、主人公の有能さは、主人公を追放したパーティーが存続の危機に陥ったりすることでも示される。高い能力が、欠落によって間接的に描かれる。この点は聖女追放モノ類型2でも酷似する。
以上のように、パーティー追放モノと聖女追放モノとの類似は非常に多い。その、「追放モノ」という大きな括りの中の2区分とすることも考えられるかもしれない。
しかし、それは避けねばならない。パーティー追放モノは主に男性向けであり、聖女追放モノは主に女性向けである。追放モノが男性向け・女性向けをまたいで流行したことは、作劇のしやすさによると思われる。
だが、両者には大きな深い溝がある。
例えば、聖女追放モノではハーレム系作品はほぼない。一人の男に溺愛されるか、皆にまんべんなく好意を向けられるかである。
一方で、パーティー追放モノは圧倒的にハーレムモノが多い。ラノベによくある、魅力的なヒロインが随時投入されていく物語との親和性が高い。
この対立は、女性向けコンテンツと男性向けコンテンツにおける、性的欲望の解消の仕方の違いとして、ジャンルを問わず見られる。これらをひとくくりに追放モノとしてしまうことは、非常に大きな誤解を生む。pixivにおいても、2026年現在、男性向け・女性向けの区分は存在しており、同人誌頒布イベントなどでもその区分は非常に明確になされている。アニメイトなどのグッズ販売店などでも、男性向けと女性向けでフロアが分けられるほどである。
以上の理由から、「多くの物語作成者に受け入れられたテンプレートとして追放という要素がある」ことは認めつつ、それらをひとくくりに追放モノというジャンルに区分することは避けたい。両者は通常交わらない。決して交わってはいけない。
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以上で、悪役令嬢モノと聖女追放モノの基本的な概念の解説を終える。接続助詞「と」で結んで並べたが、この二つに類似性はあっても対称性は成り立たないことを、最後に注記しておく。
乙女ゲームの世界を舞台とした物語によく見られる要素として、他には以下のようなものがある。
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・メインシナリオの強制力とは何か
乙女ゲームの世界において、メインシナリオが開始されると共に発生するとされる力。メインシナリオからの逸脱を許さない世界観であると、原作ゲーム内で特定キャラクターが死んだりトラウマを抱えたりする出来事が、必ず起こる。どんなに避けようとしても、メインシナリオに必要な特定の出来事が強制されることからそう名付けられている。運命論的世界観である。
SFの世界では、タイムリープモノで類似の現象が起こる。シュタインズ・ゲートなどを履修済みの人は、もう完全に理解しただろう。
なお、最近の流行はシナリオ強制力の度合いが緩いものである。共にあることが強制されているが、以前のような主従関係ではなかったり、トラウマとなる出来事の精神的ショックが主人公によって和らいでいたりし、メインシナリオの強制力はある程度残したまま、別様に展開していく。
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悪役令嬢モノおよび聖女追放モノとその周辺について長々と書いたが、衝撃的かもしれない事実がある。
悪役令嬢が出てくる乙女ゲームや、聖女が勇者と世界を救って結ばれる乙女ゲームのテンプレートがあるように述べているが、これらのゲームが実在するかは不明である。
少なくとも、悪役令嬢が断罪される内容と正確に一致するゲームの存在は指摘されていない。
これらはなろうをはじめとする創作者集団による、共同幻想の可能性がある。
作話に有利な設定が発見され、それが多くの創作者に借用されていった結果できあがったとすると、むしろ乙女ゲームとやらを想定することこそが悪役令嬢モノのテンプレートなのかもしれない。これを支持する論文などはいまだ存在しないが、レヴィ・ストロースの神話研究などを垣間見るに、十分あり得そうな話である。
聖女追放モノに関しても同様だが、こちらはそもそも乙女ゲームの印象があまり強くなく、どちらかというと現実で苦境に立たされている女性が反映されているように受け取れる描写が多く、現実を素材にとって適宜変換している可能性がある。
頑張っていても報われない人、上司に手柄を横取りされてしまった人、同僚に騙されて失職した人…等々、人生にはいろいろある。そうしたつらい経験をもとに物語を書いたり、そういう傷を心に抱えている人たちに向けて物語を書くことは、何も悪い事ではない(むしろ善行でさえある)。
日本では長らく、勧善懲悪の物語が好まれてきた。聖女追放モノによって聖女が追放された先には、必ず聖女を温かく迎え入れる人々の存在がある。自分を正しく評価してくれる人たちの元で、互いを認め合いながら共に生きていく。武者小路実篤から延々と続いてきた、浮世を憂う人々の理想社会が記された物語、善性ユートピアの最先端が、この聖女追放モノなのかもしれない。
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ここまで読んだ人はいないと思います。9割方、自分のために書いています。
もし読んだ人がいたら、おそらくもう『悪役令嬢は怪物にお伽噺を語る』は読めると思います。また、アニメ化された悪役令嬢モノについても、遜色なく楽しめると思われます。ありがとうございます、いってらっしゃい。
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作業中に流し見できるよう、関連するアニメ化作品を紹介しておきます。こんなにアニメ化されるとは思っていませんでした。正直アニメにして面白いのかどうか…ニコニコ動画でコメントと一緒に見るアニメです。
『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…』
序盤で乙女ゲーム基礎を丁寧に解説してくれます。最初からハイテンションで話が進むので、付いてこられるやつだけ付いてこい!な印象は否めないが、悪役令嬢モノの魅力が存分に出されており、入門には最適です。
これが悪役令嬢のアニメ化第一作目であり、異例の成功を収めました(主観的観測による)。この成功を下地として、悪役令嬢モノは続々とアニメ化されていく流れになったような気がします。
『歴史に残る悪女になるぞ』
幼少期から努力と才能によって悪役令嬢が自己実現していく類型のストーリー。メインシナリオの強制力が、聖女のまとう無自覚な力と解釈されている点で、若干乙女ゲーム自体へのメタにもなっています。思い切りの良い性格と、善悪についての簡便ながら厳しい議論、賛否両論ある行動をタイトル通りの主人公の信条でゴリ押すあたりは、むしろ清々しいです。脇役も良い味を出しており、冒険譚的な魅力もあります(アニメはそこまでやりませんが)。
この作品は男が全体的に弱いです。しっかりしなさい!
『悪役令嬢レベル99』
メインストーリーを無視して好きを突き詰める類型のストーリー。乙女ゲームのゲーム部分がノベルゲームだけでなくRPGゲームである場合もあり、そのゲーム要素にハマってプレイしていた主人公が悪役令嬢に転生したことで、諸々がズレていくのですが、そのズレ方が尋常ではありません。俺TUEEE系でもありますが、華美称賛よりもコメディに軸が置かれており、読みやすいです。
情けない姿を見せたキャラクターが成長を見せ、関係性も徐々に変化していくなど、この手の物語の中では読み応えがあります。アニメもコミカライズの良い表現をふんだんに取り入れており楽しく見られますので、結構オススメです。
この作品も、男が全体的に弱いです。でも頑張ってます。がんばれ。
『ティアムーン帝国物語~断頭台から始まる、姫の転生逆転ストーリー~』
悪役令嬢ならぬ悪役王妃。しかし構造は、断罪された時点からタイムリープし過去からやり直す類型です。王国の暴政により革命が起き、王妃は気づいた時には手遅れ、処刑され断頭台で首を落とされる瞬間に過去へタイムリープし、断罪される未来の改変を目指す、という筋です。この類型では珍しく、死の直前に主人公の誇り高き姿が描かれるので、かなり期待が持てるのですが…。
この作品のポイントは、主人公が部分的には改心していないように見えることです。とにかく「死にたくない」「断罪された1度目の生でムカついたから、今回は前世(?)の知識でマウント取りたい」など、まるで利己的な理由から行動を起こしていきます。その変化した行動が周囲の人間に良く誤解され、主人公自身も徐々に変化していく感じです。正しく誤配の物語が展開されていきます。
絵柄含め、コミカルで牧歌的な内容なので読みやすいです。
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いくつかアニメを履修すると、転生テンプレートの悪役令嬢モノについては、抵抗なく何でも読めるようになるはずです。
聖女追放モノは、アニメ化作品がテンプレを若干外しているため、注意が必要です。
一応紹介しておきます。
『完璧すぎて可愛げがないと婚約破棄された聖女は隣国に売られる』
タイトルの通りです。話が早い。
居場所Aを追放され、居場所Bで幸せになる類型のストーリー。注意点としては、婚約破棄した王子が主人公の妹との婚姻を望むが、妹のほうは姉である主人公を尊敬しており、環境と境遇が姉妹二人の仲を引き裂いている点です。主人公はハイスペックですが、生まれ育った環境により世界とうまく関係を結べていません。隣国にて温かい人たちに迎えられ、少しずつ心を解きほぐされ生き直していく姿は、ひとえに応援したくなります。
追放前の聖女が完全には孤立していなかったことが、良いスパイスとなっています。
『聖女の魔力は万能です』
乙女ゲームという一般ウケしづらい要素を排除しつつ、婚約破棄というこれまたコテコテのフィクション要素も排除しても、聖女追放モノは成り立つのか。
この作品は絶妙なラインでうまく調整しています。
「聖女召喚の儀によって、なぜか二人が同時召喚され、主人公だけ冷遇されてしまう(ゆるい追放)」
「非人道性を理解しつつも聖女召喚を必要とする国は、彼女の異世界での新たな生活を保障する(現実的な居場所βの獲得)」
「前世のハーブの知識が活かせる薬師として生きることを目指すも、作るポーション等にことごとく聖性が付与(無自覚に高い能力を発揮)」
もともと聖女追放モノは、婚姻破棄即追放という展開や、一国の王子が平民を側室でなく正式な結婚相手に選ぶという非現実性が、ファンタジー色を強めつつ劇的なドラマ展開を後押しする一方で、その非現実性やアクの強さから読者を遠ざけてきました。
それに比べて、この作品の聖女召喚後の展開は、無理なく進み、それでいておいしいところはバッチリ抑えています。すそ野を広げた聖女追放モノと言えます。
アニメ版の主演声優は”転生声”と言っていいくらい、この手の主人公との親和性が妙に高いです。ファンタジーな世界観で置かれた環境に振り回されていそうな声、というか。
全然関係ないですが同じ声優さんが主演の『デキる猫は今日も憂鬱』は現代東京に暮らす労働者を描いたアニメとして珠玉の出来です。この作品の魅力はどこか聖女追放モノに似たところがあります。大きな隠し事という要素が作話において果たすコミカルな役割を端的に示してくれています。なお、原作は4コマ漫画です。4コマ漫画のアニメ化の成功例として『ご注文はうさぎですか?』『ぼっち・ざ・ろっく!』らと共に必見です。
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