
ひらマンのコトバ#10「作家って可能性なんですよ。自分の可能性を試す形で作品を描いていく、その瞬間のワクワク感は後に残った作品を評価するのとは全然違うんです。」(夏目房之介先生)
1月17日の夏目房之介先生をゲストに招いての講義「マンガの読み方・評し方ワークショップ」を受講しました! 夏目先生は高校生くらいからコラムやマンガ評論を愛読し私淑しており、個人的に胸熱な授業でした(予定があり途中退出になったのが残念…)。
ひらめき☆マンガ教室の講義には、課題作品の講評や漫画制作ツール、企画のワークショップなどのマンガの制作に関わる講義のほかに、今回の「マンガの読み方・評し方」のようなマンガ制作そのものから離れた講義がいくつか用意されています。この次の回「大森望 SF創作講座 × ひらめき☆マンガ教室 合同授業」もそうですね。前回のコトバでも取り上げましたが、だれもが雑誌に載るようなマンガを描いて商業デビューを目指さないといけないわけではなく、どこでどんな活動をするか、場合によっては活動がマンガ制作そのものでないような形もふくめ、人とマンガの関わりはさまざまに見つけられるべきで、そのためにはマンガの周辺の文化についても深められるべき、というのがひらめき☆マンガ教室の思想なのかなと思います。
そして夏目房之介先生がまさに、自分とマンガの関わり、マンガを描くこと、読むこと、評すことのあわいにある一番面白いところをつかまえる実践をパイオニアとしてされてきたのだ、という話が授業前半の夏目先生、さやわか先生、大井先生のトークのなかで語られていました。夏目先生はマンガについて語りたい、語られなければならないと思いつつも文芸的なマンガ評論には挫折し、パロディ=マンガについてのマンガを描くうちに、模写によるマンガ批評、マンガ表現論という地平を見つけ、そこから在野のマンガ読みが集う研究会に、「BSマンガ夜話」に、さらには大学でのマンガ研究に発展していったのだそう。そしてこのあたりの日本マンガ評論史が今年出る夏目先生の新刊にて語られるのだそう! 読めるのが楽しみです。
また、今回の講義には「指定された制作生の課題提出作を読んでの感想・論評・批評をひらマン+に投稿する」という聴講生も参加可能な任意提出課題が課されており、講義ではこの投稿についても触れられました。どっぱくの投稿した評論はある程度好評を得たものの、「論を自立させるための結論が足りない」というごもっともな論評をいただきました。 自分が講評される立場を体験すると、制作生の課題作品や講評についても見る目が変わりますね…
さてさて、今回のコトバは、授業前半の質疑応答での「雑誌フリースタイルの特集『THE BEST MANGA このマンガを読め!』アンケートで夏目先生がサイトウマド先生の話題作『怪獣を解剖する』ではなく短編集『解剖、幽霊、密室』を1位に推されたのはなぜ?」という質問に答えるなかでのもの。優れた作家の初期短編集には、作家のあり得たかも知れない作品の可能性が詰まっていて、マンガを読むこと、評すことのあわいにも開かれているということかなと。ちなみに夏目先生の講義の締めくくりでは、かつて夏目先生が書道に入門した際に、書の先生から「この初めての書は二度と書けないから残しておきなさい」と言われたという美しい話によって作家の可能性の話に戻して閉じていたのも素晴らしかった。語りの達人技 !!!
