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心の1冊・『マニマニ』宇仁田ゆみ


ひと言メッセージ

「ひらめきマンガ+」では初めまして。第3期で聴講生をしていた香野(こうの)と申します。2024年度の最終日ですが!【心の1冊】の紹介を通して、「ひらめき☆マンガ教室」8期のスタートにあたり、ますますのご発展を祈念いたします!

☆☆☆

少女漫画と出会い直す - 宇仁田ゆみ『マニマニ』(2003・祥伝社)

単行本を実際に手にしたのは2006年頃。しばらく漫画から離れていた私が、再びの邂逅を果たした作品でもある。

オムニバス形式で1話ごとに主人公が入れ替わり、それぞれの日常がひとつの世界でつながっている。現在は2002年、過去編は1986年の設定。80年代後半からゼロ年代中盤までの「女子」を切り取ると虚像めいたものになりがちだが、本作は実感値にかなり近い。(もっとも、宇仁田作品が日常を描く際の「心象風景」のリアリティラインが切実なのは本作に限らない)

「大人の女性のための純少女漫画」を目指したという作者の言葉はコミックスにも収録されているが、連載誌は「フィールヤング」で、その目論見がキレイにはまっている。「学生時代の恋愛とか友人関係とか、世知辛い社会とかハラスメントとか、全部知ってしまった大人だからこそ、年齢も環境も違うそれぞれの主人公に共感できる。

当時は、堅く封じ込めていた「ときめき」を自分の中に再確認して戸惑った。「ひらめき☆マンガ教室」の受講を経てわかったことがある。(言い方は乱暴だが)作者会心の一撃をくらっていたに違いない。

再読にあたり、ひらめき☆マンガ教室に通ったからこそ気になったポイントは他にもある。あとがき(AFTER COMIC)において「デジタル入稿」を初めて行ったという告白がある。そんなエポックメイキングな瞬間に立ち会っていたのか……と思うと感慨もひとしお。正直に言うと、当時はマンガの「ペン入れ」というものが、よく分かっていなかった。

刺繍やフェルトモチーフのブックデザインにも注目されたし。(当時のトレンドを汲んではいるが)いま見ても満足度の高い「ときめき」が随所にあり、「大人の女性のための純少女漫画」らしさは全開。

※続編も収録されている『アカイチゴシロイチゴ』もおすすめです。(電子版もあるよ)

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