
サルまん サルでも描けるまんが教室 21世紀愛蔵版 下巻
・好きな漫画とその巻数
サルまん サルでも描けるまんが教室 21世紀愛蔵版 下巻

・選んだ理由
「漫画は自由だ」と最も心に響いたから。
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内容は名前の通り、漫画の描き方についての漫画です。
漫画の描き方については多くの先生方が漫画や本で語ってきました。
手塚治虫先生、藤子・F・不二雄先生、鳥山明先生、、
それらどれも「漫画は描けないものはない」「自由に描いていい」と言ったメッセージが入っています。
その中でサルまんは、漫画を描く上での苦悩や商業連載での不自由さを描いている一方で、なぜか読んで伝わるメッセージが「漫画は自由」と言う、不思議な構造をとっているように思えます。
上巻では、少年漫画、少女漫画、はては動物漫画まで、さまざまなジャンルの特徴をギャグで描いています。単純化されすぎて「そんなわけないだろ」と笑いながらも、どこか本質を突いていて面白い。
そして下巻。
『とんち番長』という漫画を連載している作者たち自身を主人公に、物語が展開されます。
下巻は1話1話がしっかり繋がっていて、巻を通してものすごいドライブ感があります。
一度読み始めたらページをめくる手が止まりませんでした。
作中で連載している『とんち番長』も、無茶苦茶な展開なのになぜか面白い。
その『とんち番長』と、それを描きながら苦悩する作者たちとを、行ったり来たり描かれているのですが、そこが最高です。
作中では、作者たちが綺麗に話をまとめ『とんち番長』の連載を終了させようとしますが、人気があったため編集に続けさせられた、と言ったシーンがあります。
そこから、方向性を見失い、路線変更を繰り返し、精神が崩壊し、落ちぶれる様が描かれます。
精神の崩壊が『とんち番長』の表現に現れ、気が触れてしまった作者達を描かれる。
というかこの「気が触れた作者達」を描く作者の心境はどうなっているんだ!?
「漫画はこんな表現ができるのか!」と感嘆しました。
ちょうど仕事で精神的にまいっていた時期に読んだこともあり、読後にはとてつもない開放感を味わいました。
ちなみに、漫画ではないですが、同じような開放感を味わった作品としてアニメ『ふしぎの海のナディア』もあります。
Amazonプライムで一気見したのですが、最初と最後のクオリティが高く、中盤のヒドさとの落差が凄い作品です。その落差の理由をWikipediaで読んだのですが、爆笑してしまいました。こちらもおすすめです。人生に行き詰まった時に見ると元気が出ます。
サルまんを読んだ後だったので特に、漫画やアニメといった「作品」も、締め切りや予算といった制約の中で作られる「商品」なんだなと強く感じました。
田舎育ちで、古本屋を通じて漫画を集めていた自分は、どこか「作品は遠い地で神々によってポンと生み出されるもの」のように感じていました。
でも、そうじゃないなと。
ビッグネームの先生方も、有名な制作会社も、現実の制約の中でもがきながら作品を生み出してきた。
そう思うと、ますます尊敬の気持ちと、これまで楽しませてもらったことへの感謝の気持ちが湧きました。
そんな漫画観が変わるきっかけにもなった、サルまん下巻を今回は選びました!