【本】『立ち止まらない少女たち 〈少女マンガ〉的想像力のゆくえ』を読んだよ【No.2】
ふらっと立ち寄った新古書店(であってるのかな)に置いてあったので買って読んだ。
『立ちどまらない少女たち: 〈少女マンガ〉的想像力のゆくえ』(著:大串尚代、松柏社)
少女マンガに対するアメリカ文学(とりわけ感傷小説と呼ばれるジャンルや児童文学)の影響を歴史的に(雑誌文化的に)掘り下げていく本。ある時代の少女マンガはなぜ外国が舞台なのか、とかね。言われてみりゃ「まあそりゃそうだよね~」という部分なんだけど、そこをしっかりマテリアルにあたりながら記述してくれているのがとっても便利。研究者バンザイ。64年の観光渡航解禁とか。そういうのマンガ好きから始まった人だと抜けがち。
少女と百合っちゅうビジュアルの組み合わせは割と最近生まれたこととか、少女文化の発展に修道院(というか、アメリカさんからやってきた宣教師?)が一役買ってた話とか普通におもしろい~。思想教育がナチュラルに(日本から見たら国外の)ナショナリズムとしてやられていたり、戦後の占領戦略の一種として思想が使われたりしているんじゃないかと想像させられる。今はそうでもないけど、少し前だとこの手のロジックはすぐに右翼と絡められて難しいところがあったけど、今ならまた少し距離感出てきたんじゃないだろうか。
2021年という本が出た時の流行りの関係もあるんだろうけど”ここではないどこか”にこだわりを持っているのが興味深い。とはいえ、本の中ではそれがアメリカなんです~を超えるくらいの結論があるわけではない。筆者もちょっと心残りがありそうな雰囲気だし、今書いてることとか追ってけばわかるかな。
感傷小説って概念を知れたのも楽しかった。感傷マゾとか言ってる人達、全然こういうのには言及しないのよね。まあいいんだけど。
作品論という体で話が進むんだけど、それにしてもあらすじが長いし多すぎ!これから読む人はそこに注意。
『島本和彦のマンガチックに行こう!』で、島本和彦が語ってたあらすじ論はやっぱ偉大だな。宇宙戦艦ヤマトの島本風あらすじを例にあらすじってこういうもんだよ!って説明してるやつ。あれ聞き直したいんだけどいまだにアーカイブが見つからない。誰か該当回を知っていたらこそっと教えてください。
あと本の内容を素朴に信じるなら、ただ単に国外の思想教育とか時代の要請に乗せられただけの部分とか結構ありそうだし、”立ちどまらない少女たち”ってタイトルは若干中身とズレている気もする。
おわり