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藤原ハルさん『犬を送る』の感想


受賞おめでとうございます。

今回は、藤原ハルさんの『犬を送る』の感想です。受賞のお知らせのコメント欄に感想を投稿しようとしたのですが、ちょっと長くなりそうなので、こちらに書こうと思います。

何が起きたのか気づかないおばあさんに、おじいさんが何も言わないのがいいですね。静かに悲しみを受け止めていく圭さんとマリさんをそっと見守るようなおじいさんが、素敵でした。

おじいさんから「残念でしたね」と声をかけられたあと、7p1コマ目の微笑んでいるようなマリさんの表情が、ゆっくりと悲しみを噛みしめているように感じられて、印象に残りました。枠の外までひらひらと散る花びらが、寂しい雰囲気もあるけれど、とてもきれいで魅力的でした。

12pでウンチをしてしまってたたまちゃんの後ろ姿が、かわいらしかったです。次のページでたまちゃんに助けを求めているマリさんが楽しそうで、その分14pからの場面で「あなたは私の気持なんかわかんないでしょ」と言うマリさんと、それに「きみには俺の気持ちが分かるの?」と言い返してしまう圭さんの姿が、より痛々しく感じられました。

18p、19pで、たまちゃんの散歩に出かけるシーンを見て、たまちゃんの存在の大きさが伝わってきました。二人のそばに、たまちゃんはずっといたんだなと思うと、たまちゃんがいなくなってしまった悲しみが、どれほどのことか少し分かるような気がしました。

20p~24pで圭さんとマリさんが桜を見あげるシーンが、とてもよかったです。22,23pで、過去と現在の二人がほとんど同じ場所で桜を見ているからか、変わってしまったところ、たまちゃんが亡くなったことや二人の気持ちが離れてしまっていることがより一層、際立って伝わってくる感じがしました。次のページで「・・・ずいぶん」「遠くまで来てしまったみたい」「別れよう」と、マリさんが別れを切り出す流れが自然に思え、納得感がありました。

ソファの隙間から出てくるたまちゃんが隠した七夕の短冊が、かつての気持ちを思い出すきっかけになるのが素敵でした。

二人は別れてしまうんだろうなと思いながら読んでいて、30pで圭さんが「やり直そう」と口にして少し驚きましたが、二人がやり直す選択をしたことが、いいなと思いました。色々なことがあっても関係を繋ぎとめようとする圭さんと、その気持ちを受け止めるマリさんにグッと心が動かされました。

ただ、それまでの圭さんとマリさんとたまちゃんの普段の暮らしの描写がちょっと控えめに感じられたので、もう少しそこが詳しく描かれると、このシーンの圭さんの気持ちがより深く伝わってきて、いいのかなと思いました。

32pで圭さんが「幸せにするって」「約束したから」と言うシーンは、とても印象的でした。かつて持っていた気持ちを思い出して、もう一度歩き出そうとしている決意みたいなものが感じられました。グッとくるいい場面なので、圭さんがどんな顔でその言葉を言ったのか見たかったような気もしました。

タマアジサイを植えるラストシーンは、二人の未来にささやかな希望が感じられて、とてもよかったです。どうなっていくのかはっきりとは分からないけれども、二人のこれからが穏やかなものであってほしいと思いました。

以上になります。

全体的にいい物語だなあと、しみじみとしながら読みました。ささやかな一歩を踏み出すという感じがとてもよかったです。

ちょっと普段よりも長い感想を書いてみました。読みにくい箇所などがあったら申し訳ないです。

ここまで読んでいただきまして、ありがとうございました。

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