wsの課題。
「主人公とは?」ってこの話でソレを拾っていくの!?
久保帯人「BLEACH」46巻を読んだ時の私のココロの声です。それまで「BLEACH」はそこかしこに私がエンターテイメントとして知ってそうなことが散りばめられていてさらに細かなところまで拾っていた痒いところにまで手が届いた作りでした。わかる範囲でもあげればキリがないほどで、私の知ってそうなエンタメならば、おねショタ、子連れ狼、百合関係、猫がしゃべればい犬もしゃべる、マスコットキャラクターがいる、家族に内緒で女子を私室にかくまう男子高校生、押し入れに住む、窓から出入りする、異世界女子に力をもらう男子、双子ではなく自分と同じ姿だけど別人格、周囲には内緒の変身ヒーロー、囚われの姫を助けに行く王子、素顔を隠す仮面、いわゆる男子小学生レベルのエロ、声に出して叫びたい必殺技、声に出したくなる詠唱、剣を使う人と弓を使う人と武器魔法を使わないで戦う人とダメージ回復できる人のパーティー、武器の刀はパートナーでなんならその刀に育てられる、敵側にも揉め事がある、感じ取れる人には受け取ることのできるBLな関係性、主人公はピンチからの復活劇を繰り返しそして成長、息子が父親の職業を選択してた、などなど上げればキリがありません。 そして細かく拾って説明してるところでは、戦闘時に壊した建物は修理費として給料から差っ引かれる、敵地に乗り込んだけどよくよく考えれば何処に行けばいいか解ってないとキャラクターがわかっていて解決策としてとりあえず出会った人に聞くことをちゃんと説明がてら描く、助けに行く4人のメンバーは学校の成績が学年1位を筆頭に40位以内、背負ってる刀がどう考えても身の丈なのでどうやって抜くのかと思ったら使う瞬間鞘が霧散する、現代日本には全く知り合いもいない異世界の女子を助けに行く理由、時間を高校生活とリンクさせていて例えば最初の長期バトルは夏休み中で次は2学期中なため欠席した分は補修受けてた、なぜ必殺技を叫ぶのか、なぜ刀の名前を呼ぶのか、登場人物の名前を読者に覚えてもらうためも含めてわりと名乗ってくれるがその名乗りでなぜ名前を聞くか聞かないかも説明してくれる、などとにかくとてもわかりやすく描いてくれてます。
つまりBLEACHにはありとあらゆるエンターテイメントの要素を含んだ塊の様に見えさらにそれらのエンターテイメントでは描かなかった細かいとこまで拾っていった作品に思えきゃっきゃうふふと読んできたのですが、46巻でまさかのそれさえも布石だったのでは?とも思えました。よりにもよって「主人公とは?」までも拾いました。
46巻で主人公黒崎一護は敵の藍染惣右介から発言、そのままではなく要約ですが次のことを聞かされます。
「よく成長したものだ、今までの戦いはすべて私の掌の上だ。君こそが私の探求における最高の素材になると確信して手助けしていた。一度もおかしいとは思わなかったのか?死神である朽木ルキアとの出会いから戦った相手との出会いも運命で、勝利は自分自身の努力の結果だと思ったのか?私はキミが生まれた時から知っている。君は生まれた瞬間から特別だ、なぜなら君は人間と……」
一護にとってはいきなり言われても意味不な藍染惣右介のこの発言ですが途中に一護の父親が死神姿で現れ、生まれが特別な訳を知ります。そしてさらにこの藍染惣右介の発言には続きがあり、なぜ一護のクラスメイト2人も特殊能力に目覚めることができたのかも説明します。説明の核になるアイテムの崩玉、今現在は藍染惣右介が取り込んでいる崩玉は元々朽木ルキアの体内にあり朽木ルキアは黒崎一護と出会った。朽木ルキアは一護のクラスへ転校し学校にも通いクラスメイトと交流もあった。それぞれの力が目覚めたのは全て彼らが望んだから崩玉が手助けした。つまり崩玉の力とは自らの周辺にあるものの心を取り込み具現化すること。実際、一護が死神になったのも家族を助けたかったからですが本当に死神になれるかの確率は決して高くなく失敗したら死ぬという手法だという事を納得した上でです。
この件を読んだ時、崩玉のメタファーは作者であり編集であり私たち読者であると考えられ、純粋な物語を楽しむ自分とそんな物語を楽しめるのはなぜかと言うか事が頭の中を駆け巡りそりゃー大変でした。何度かページを閉じて整理もしました。楽しくエンターテイメントを読んでいたのにいきなり紙に描かれたマンガ作品に「それはあなたが望んだ事です!!」を叩きつけられたからです。
そしてその後、主人公は能力をなくしてしまう。能力を無くした後は
新章の死神代行消失篇が始まり、最初のページで朝ベッドから起きた主人公の身体の向きは読者から向かって右。未来を示すページをめくる向きとは逆。さらに窓の外を見ているが読者からは背を向けている。そして「睡ぃ(ねみぃ)」と言ってます。今まではベッドの枕の位置は右だったためここでも、主人公の内面の「力を失った事への未練」を表しながら読者の何かも突いていると思いますし、読者へも何かを言ってると深読みできます。実際このページを見た瞬間に、身体の向きの気持ち悪さ、居心地の悪さを感じました。
ザ・エンターテイメントである「BLEACH」は、まさかの「主人公とは?」と言うメタな問いかけをされるとは思わず、予想外の印象を残した作品でした。