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【WS】『これ描いて死ね』第1話の感想文


『これ描いて死ね』は、とよ田みのる氏作の学園コメディ漫画である。
今回は第1話に絞って感想を述べる。
簡単なあらすじを言うと、伊豆大島(作中だと伊豆王島)に住む女子高生の安海 相(やすみ あい)が学校に漫画同好会を作り、漫画制作を始めるといったものだ。

 

【どんな漫画なのか】
この漫画は一見学生たちが漫画家を目指すサクセスストーリーのように見えるが、どちらかというと日常モノに近いコメディ漫画の様相を呈している。
根拠は、主人公が明確に目標を掲げていないことだ。
主人公は漫画を描き始めるが、デビューする!売れたい!みたいな大きな目標は掲げていない。あくまで日常を楽しむために漫画を描き始める。近いと思ったものは『げんしけん』だ。主人公の笹原は大学に進学してオタク系のサークルに入ろうと奮闘する。これは大きな目標ではなく、キャンパスライフを充実させるための単なる行動(選択)である。
具体的なシーンで説明すると、『これ描いて死ね』では主人公がコミティアに行き、「自分も漫画を描ける」と気づくシーンがある。ここは見開きで描かれており、モノローグが「そっかー」である。目標ではないが、主人公が何かに気づいたシーンだ。それに対して『げんしけん』は、主人公がイケメンの高坂の家に行くシーンがある。自分と同じ1年生で引っ越してきたばかりのはずなのに、すでに部屋はオタクグッズでごちゃごちゃしている。その部屋を見た主人公がモノローグで、「俺に足りないのは覚悟だ」と語る。どちらも「海賊王に俺はなる!」とは違い、何かに気づく程度の言葉となっている。
ワンピースはルフィと読者が同じ目標を共有し、彼の冒険を疑似体験し楽しむエンタメだと思うが、『これ描いて死ね』や『げんしけん』のようなコメディ漫画は、その時々で主人公の目的はあれど、基本的には読者と共有する目標はなく、キャラクターたちの掛け合いや行動を俯瞰して楽しむエンタメだと考える。

 
【魅力】
前述したようにこの漫画はコメディであるため、やはりキャラクターの掛け合いが最大の魅力だと思う。
第1話では、冒頭で漫画を楽しむ主人公と、漫画を否定する教師が出てくる。まさに対立関係だ。
しかし、ネタバレになってしまうが、1話のラストでは主人公の憧れの漫画家が実はその先生だったことが明らかになる。そして主人公は先生にこう告げる。「先生、私に漫画を教えてください。」このセリフで第1話は終わる。
この終わり方によって、2話以降漫画を描きたい主人公と、なぜか漫画を全否定する先生との掛け合いに期待感が高まる。キャラの組み合わせが見事だ。彼女ら以外にも魅力的なキャラクターがどんどん出てくる。キャラ×キャラによる化学反応が楽しみになる。主人公が漫画家になるかどうかは読者にとっては重要ではないのだ。

 

【まとめ】
先ほど『げんしけん』に近いと述べたが、もう少しメジャーなもので言ったら高橋留美子作品やあだち充作品に近いと思う。
『これ描いて死ね』は漫画を描く女子高生の話だが、あくまでコメディだ。あだち充作品で言ったら、野球部の少年の話でもメインはラブコメだ。漫画、野球が、コメディを面白くさせるエッセンスとして存在するだけのように思える。
しかし、私はまだ1話の感想を述べたに過ぎない。2話以降、展開が急激に変わり、熱血スポ根漫画に様変わりする可能性もある。読者の反応次第で作品の方向性が変わる話はよく聞くが、とよ田みのる氏のポップな絵柄による熱血スポ根漫画も、新しい感じがしてそれはそれで面白いのかもしれない。出来ることなら、安海 相ちゃんは茨の道には進まず、のびのびと漫画を趣味として楽しんでいってほしいと願う。作者自身を投影したと思われるキャラクター、手島先生の指導然り。

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