作品分析 #1 「夫のちんぽが入らない」第1話
ネーム模写だけでなく、特定のマンガの1話の構成・構造をきちんと分析することをやってみようと思いたちました。
アウトプットしたほうが整理されるので、ブログにしてみようと思います。
今回は「夫のちんぽが入らない」(原作:こだま、漫画:ゴトウユキコ)の第1話です。
夫のちんぽが入らない – Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%AB%E3%81%AE%E3%81%A1%E3%82%93%E3%81%BD%E3%81%8C%E5%85%A5%E3%82%89%E3%81%AA%E3%81%84
※分析する上で具体的な内容に触れるため、ネタバレが発生しますので作品を未読の方はご注意ください。
この作品はもともと同人誌にエッセイとして寄稿された小説。同人誌が話題となり、長編小説となり、漫画化され、のちドラマ化もされたという凄い作品です。
自分は漫画として連載(ヤンマガ)でリアルタイムに読んでいました。タイトルに初めはびっくりするけど、決してただ下品な話題とかではなく、シリアスなテーマだけど、コミカルかつ情緒が描かれていてめちゃくちゃ面白い。
「おとちん」と呼ばれているらしいですね。知らなかった。
ページ構成
第1話を大きなセクションに分けて、セクションごとにどんなことをやっているか、さらにセクション内を細分化して、そのなかで何をやっているかを書きます。
できるだけ事実・描かれていることそのものを書きます。
凡例:
見開き
1ページ ほぼ1ページ
文字のみ
- 【セクション1】p1-4 (4p) アバン、テキスト「夫のちんぽが入らない」
- p1 事後 血、裸で陰部を拭く夫、妻の顔アップ)
- p2,3 裸でベッドによこたわっている妻
- p4 テキスト「夫のちんぽが入らない」
- 【セクション2】p5-20 (16p) 主人公登場、引っ越し、倉本との出会い
- p5-6 年代・季節・車での移動、主人公の登場
- p7-8 両親(母メイン)・大家さんの登場、大学生という設定の提示、ボロい下宿、床がギシギシ、大家さん退場
- p9-10 父親がボロさを心配、両親との別れ、心の声の入り(実家/田舎からとにかく出たかった)
- p11-15 倉本の登場(突然部屋に入ってくる)、主人公赤面、倉本カーテンの取付け手伝う&教科書をゆずってくれる
- p16-18 部屋でくつろぎ始める、自己紹介
- p19-20 倉本出ていこうとして主人公呼び止め、スーパーの場所を質問、心の声(もっと居てほしかった・自身への驚き)、次セクションの始まり
- 【セクション3】p21-36 (16p) スーパーに行きながらを街を案内してもらう、二人で深夜の外食、一緒に寝るけど何もしない
- p21-22 街を歩きながら紹介、深夜に外食に誘う
- p23-28 鍋焼きうどんを食べながら、出身地の質問→ど田舎とバレていじられる、楽しげに会話しながら帰る二人
- p29-31 部屋に戻る、倉本 この部屋で寝ていいか・何もしないから、許可する主人公、陰毛を見つけて焦って拾う主人公
- p32-36 同衾する二人(見開き)、時計の音、主人公のお尻に倉本の手の甲が触れる、静かな寝息を立てている倉本、主人公 本当に何もしないんだ
- 【セクション4】p37-48 (12p) 告白、付き合う、最初のセックス、ちんぽが入らない
- p37 また一緒にスーパー、昨夜のことを反芻する主人公、気恥ずかしそうな倉本
- p38 倉本の告白、きょとんとする主人公
- p39-41 意味がつかめない主人公、呆れて赤面する倉本、理解する主人公(顔アップ)、主人公の答え、心の声(好きな人に好いてもらえた)
- p42-43 心の声、本名を知る、服を脱ぐ・脱がせる
- p44 キスをする二人
- p45 前戯、挿入しようとする
- p46-47 挿入しようとする、太鼓のような音、おかしい
- p48 まったく入らない、テキスト ちんぽが入らなかった
要素の分析
まず、とてもきれいにセクションが組まれていることがわかる。
4p + 16p + 16p + 12pの構成で、どのセクションも単独でも面白いし、一つのお話が始まって閉じる流れがきれいにある。
また、それぞれのセクションがスムーズに流れをつくっていて、【アバン・テーマの提示】→【主人公とメインキャラの登場・キャラ紹介】→【二人の関係の深まり】→【告白・セックス・失敗】となっている。
強い表現になる、見開きと1ページ全面(orほぼ全面)のページにはマーカーを付けてみた。
セクション2のキャラの登場には存在せず、セクション3・4の重要なシーンに登場するが、こう見ると絵的な表現としてはセクション3の中盤〜セクション4の序盤までに一番の山が来ている。
ストーリーの作り方の講義であったように、物語の基本的な構造で考えると、こんな感じかな。
セクション2:主人公の現状
セクション3前半〜中盤(外食→同衾):見どころ①
セクション3後半(何もしない):仮の失敗
セクション4前半〜中盤(告白→付き合う→セックス):見どころ②
セクション4後半(ちんぽが入らない):クライマックス(大きな失敗)
これで合っているかな?
仮の失敗の後にもう一回見どころがある気がしたけど。
あと、これは、上げて落として上げてさらに最後落とす、というような波を作っている感じですね。
■他にもいろいろ気づいたことがあるけど、整理しきれないのでざっと書き出す。
- 床がきしむことが繰り返し登場して、効果的な演出になっている
→ 下宿のボロさ、倉本登場を予期させる - 全体的に音(書き文字)が演出やキャラの見せ方として多用されている
- 逆に音がないことも演出になっている
→ カメラで瞬間を切り取ったようにシーン/時間をぱぱっと見せる(p5,23,29,37,44,45)
→ 音が入るときとのギャップ表現
- そもそもタイトルがストレートなので、しっかりしたフリが最初からある
- テキストでの始まり・終わりによって、主人公(妻)の私小説的な話であることが明確提示されている
- 倉本のキャラが細かいエピソード、行動、デザインにはっきり描きこまれている
- 突然部屋に入ってくる
- カーテンをとりつけるのを無言で手伝う
- 教科書を譲ってくれる
- 勝手に部屋でくつろぐ
- 野球観戦
- 服装、服のチョイス
- 街を案内してくれる
- 机を叩いて大笑いする
- ぶっきらぼうな口調
- 告白はちょっと丁寧な言葉
- めくりは自然なつながり、次の展開の予感、その応え・裏切り・驚き
- フォントは3種類 + アルファ
- 心の声(明朝系)
- 通常のセリフ(アンチック)
- 強調されたセリフ(新ゴ?ゴシック、たまに丸ゴ)
- その他
- リモコン、テレビなどの効果音
- テレビの中の声
■もうちょっと深掘りたいところや疑問点もメモ
- キャラデザとキャラ設定・物語設定との対応やディテールを捉える
- 絵の表現 (塗り方、消し方、ベタ、ライティング、背景)
- 告白の背景にくっきりと銭湯が描かれている意図(→後で思い出として使われる?)
しかしめちゃくちゃ面白いし上手いな〜〜〜
一旦以上です。
初回にしてちょっとやりすぎたので、次回からはもうちょっと気軽な感じに行きたい。。