マンガを読む時間を計ってみたい、という話 #001
はじめに
マンガの要素というと「絵」や「コマ」や「文字」など、様々なものがある。マンガを読むとき、人々は、これらの要素を総体として受け止めてページをめくっている。
マンガを読むという行為を言葉で捉えるのは非常に難しい。かつてより多くの人が言葉にしようと試みてきたが、いまだ総意となる言説は存在しない。とはいえ成果がないわけではない。ある先人たちは「マンガはリズムが大事なのだ」と言い、これは多くのマンガ家が同意するところであるらしい。
ところが非常に悲しいことに、ぼくには、この”リズム”というものが全くピンときていない。
リズムっていったい何なんだ。
言葉で困ったときに立ち返るべきなのは辞書である。”リズム”を辞書で引くとこう書いてあった。
リズム【rhythm】
1 強弱・明暗・遅速などの周期的な反復。「生活のリズムが狂う」2 音楽の基本的要素の一つで、音の時間的な変化の構造。アクセントが規則的に反復する拍節的リズム、アクセントの継起が不規則な定量リズム、音の長さに一定の単位をもたない自由リズムなどに分類される。「リズムに乗って踊る」
3 詩の韻律。
デジタル大辞泉より引用
リズムとは何? Weblio辞書 2022/03/03閲覧
「マンガはリズムが大事なのだ」と話す人々が、”リズム”をどの意味で使っているのかは定かではない。が、おそらく上記3つの内のいずれかのニュアンスは含まれているだろう。
というわけでぼくは、自分がマンガを読む際に経過している時間を計測してみることにした。”1”や”2”の意味を読むに、どうやら時間的な要素が重要であるように思えたからである。また、”3”にある「韻律」というのは、音声に関わる用語(つまりは波に関係している)であり、こちらも時間的な要素を含んでいるように思われた。
レギュレーション決め
そうと決まれば次はレギュレーションを決める必要がある。一口に読むといっても様々なやり方がある。他者から見て、価値判断が可能な取り組みにするためには、ここでいう読むというのが何を示すのか明確にしなければいけない。そこでぼくは、マンガにおける要素を<絵>と<文字>だけに切り分け、以下の3つの読みを行うことにした。
<絵>と<文字>を区別せずに読む。
<絵>を排除し、<文字>だけを読む。
<絵>だけを読み、<文字>を排除する。
なお<文字>は吹き出しやモノローグなど、コマ以外の線で囲まれた領域に位置するものを示している。したがって、描き文字や効果音は<絵>に含めた。ただし、上記の定義が示すように、描き文字であっても吹き出しなどで囲まれていれば(つまり、<絵>とは別のレイヤーにある構成要素であることが明確に示されていれば)<文字>として扱った。
が、これは失敗だったことがのちにわかる。マンガは各要素を(創作者、消費者の区別を問わず!!)総合的に捉えて創作する/読み進めるメディアであり、構成要素を切り分けることそれ自体が不可能に近かった。単にぼくが行った要素の想定や定義づけが間違っていただけの可能性もあるが、この辺りは興味のある方にぜひチャレンジしていただきたい。
<絵>だけを読む際には、5W1Hを読み取ることを心掛けた。本来であれば<文字>を白く塗りつぶし言葉通り<絵>だけの状態にして読むべきであるが、手間と権利の関係から(ぼくの環境では、販売されているマンガ作品を画像処理が可能な状態するには危ない橋を渡る必要があった)それは行っていない。この点については<文字>だけを読むときも同様である。
また、読了時間を計測するとともに、作品単位でページ数とコマ数も数え上げた。ここでは扉絵は1ページとして捉え、見開きは左右合わせて2じページと換算した。他にも時間遷移を示すコマ(コマ枠だけが描かれ、コマ内は空白であるk間のこと)は各々を1コマとして扱い、コマの上にコマが重なる場合にも各々を1コマとした。
次回の更新にて、週刊少年サンデー 2022年14号(2022年3月2日発売) で上記を行った結果を示す。
おわり。
2023年7月12日追記:『タイトルが長い』とのご指摘があったのでシリーズタイトルから【加筆修正版】を取りました。