【投稿コース】第6期 投稿コース講評:『夜の自動販売機(ネーム)』【7月分】
ひらめき☆マンガ教室第6期から新設された投稿コースでは、月に一度、ひらめき☆マンガ+内に投稿したマンガの中から自由にひとつの作品をえらんで講評を受けることができ、内容はひらめき☆マンガ+で公開されます。
第6期、7月分の講評には全3作品の申込みがありましたが、本記事では、つりばしわたるさんの『夜の自動販売機(ネーム)』の講評をお伝えいたします。
3.『夜の自動販売機(ネーム)』つりばしわたるさん
講評:さやわか先生
受講生アピール文
つりばしわたるです。講評よろしくお願いします。
今回は新しくネームや作品を描く余裕がなく、過去に未提出だったネームを、少し手直ししたものの講評をお願いしたいと思っています。
この作品は、ひらめき☆マンガ教室の第1期、横槍メンゴ先生の課題「出会いの瞬間」に提出する予定で描いたものです。
大切に思っている人に対して、インパクトのある出会い方を考えて、このような話になりました。
以前考えていた時は、最後に出会うのはアイドルではなく、昔好きだった人などを考えていたのですが、なるべくわかりやすくするために、アイドルファンがアイドルに出会う話にしてみました。
読後感としては、「少し変なホラーマンガを読んだな」という気持ちになってくれたらいいな、と考えています。
想定媒体として、自分のTwitterか、もしくは自分の同人誌を考えています。
現時点で商業デビューは考えていませんが、作風の勉強も含めて、自分に合いそうな商業誌は見つけていきたいと思っています。
たとえばNemuki+など、女性向けホラー雑誌ではないだろうと思いますが、具体的にどの雑誌に合いそうかということは、まだつかめていません。
講師講評(さやわか先生)
つりばしわたるさん、ご投稿をありがとうございます!過去の課題に提出するつもりだった作品ということなので、横槍メンゴさんの課題「出会いの瞬間」に沿った内容になっているかどうかを判断してもいいのですが、特にそれを望まれている訳でもないと思いますので、以下あくまでもこの作品として思ったことを書かせていただきますね。
まず作画のレベルはネームの時点で高く、特に冒頭の市街地の道の狭さ、そして山道の入り組みかた、さらには自販機周辺の広場恐怖的な開放感などが効果的な構図で描かれているのは好ましいと思いました。9ページ目あたりの連続して購入を繰り返すシーンは、ちょっと作中でやっていること、コマ割り、そして構図が単調になりはじめているので、ここだけ思い切った工夫(何らかのメリハリをつける)をしてもいいかもしれません。ただ、これだけきちんと描けているので、その手法も作者自身で思いつけそうには思いました。
コメントとして、想定媒体について書かれていたので、以下それについてもお話ししますね。まず「自分のTwitter、もしくは自分の同人誌」というのでも、全く問題ないと思います。ただ、そうであれば読者は「自分の知り合い」に近い人たちですよね。別に商業デビューを目指さなくてもいいのですが、「想定媒体を選ぶ」というのは、これすなわち「読者を想定する」ということだと考えていただいたほうがよく、つまりこの作品が「その人たちが喜ぶモノなのかどうか」を考えながら作品に向き合うといいのではないかな、と思います。
個人的に気になったのは、コメントとして”「少し変なホラーマンガを読んだな」という気持ちになってくれたらいいな”と書かれていたことです。そこはもうちょっと踏み込んで欲しいのです。「少し変なホラーマンガを読んだな」というのは「事実」であって、「思うこと」ではないのではないでしょうか。つりばしわたるさんは、「少し変なホラーマンガを読む」ことで、「自分の知り合いに近い」読者たちに、どう思ってほしいのでしょうか。「怖い」とか?「笑える」とか?その気持ちをもうちょっと(自分が思っている以上にかなり強く)持つと、結果的に、この漫画の与える読後感がより強調できて、自分が描きたいことが伝わり、みんなが面白いと言ってくれる確率が上がると思います。これは「微妙な気持ちにさせたい」みたいなことではダメで、かなり強く意識し、具体的に言語化して、ようやく相手にぼんやり届く程度のものだと思っていただければと思います。
商業媒体名、具体的にNemuki+を挙げられていますが、これも同様で、明確に「自分がホラーを描きたいかどうか」つまり「漫画で人を怖がらせたいかどうか」を考えた方がよいのではないかと思います。そうでないのであれば、それはそれで、上記したようにどのような感情をこの漫画で与えたいかを強く意識して、ブラッシュアップを行い、掲載媒体を(つまり想定読者を)選ぶといいかもしれません。
そもそも、媒体を想定するのは、なぜでしょうか。それは、想定媒体を意識することが、すなわち想定読者について考えることにつながるからです。つまり、その媒体を読む人が、何を面白いと思うのか、何を望んでマンガを読むのかを考えることにつながるのです。そこを掘り下げて考えないと、「何となく」とか「特に思いつかないから」みたいな感じで発表媒体を選ぶことになってしまいます。逆に言うと、発表媒体を想定し、その媒体を読んでいる読者がどんな人かを考えてみると、自分が描いたマンガが、その表現でいいのかどうか?その内容が(とりわけ想定読者に)理解可能なものかどうか?そもそも自分は、どんなマンガを描くべきなのか?みたいなことを、自分で顧みやすくなります。自分が何をすべきかがわかるってことですね。だから、媒体を想定するのは、いいことなのです。
以上のお話は、ひらめき☆マンガ教室でよくご説明していることなのですが、いまひとつ伝わりにくくて、みんな「想定媒体を決める」というとイコール「商業デビューを目指そう!」みたいな話だと思ってしまいがちなのですが、そうではないわけですね。よかったら、それについても、すこし、見つめ直していただけるとうれしいです。
そんな感じなのですが、いかがでしょうか?よかったら、何か今後の作品作りの参考にしていただければ、とてもうれしいです!よろしくお願いいたします!
講師講評ここまで
以上になります。
つりばしわたるさん、講評にお申込みいただきありがとうございました!
おわり